第10話 よろしくないけど、ならば戦争です

「鏡よ鏡、世界で最も強大な軍事力を持つ国家を答えよ」

「王妃様、それは東のグロリオーサ帝国です。兵力は我が国の約30倍。特に第一王子ストレチア殿下の率いる赤騎馬隊は無敵を誇ります」


「鏡よ鏡、王子の野心は?」

「ユーフォルビア殿下のご生母の実家、カランコエ家が治めるキャノーラ地方。大陸でも指折りの穀倉地帯を欲してございます」


帝国が虎視眈々と狙っていた肥沃な土地。今までは攻め込む大義名分がなかったから難を逃れていただけ。ユーフォルビア姫の夫という立場を手に入れた今、ストレチアはすぐ所有権を主張し行動を起こす。


大きな執務机の上に地図を広げ、各地の道路や地形をつぶさに確認する。


「……鏡よ鏡、ストック村のスイートピーの今年の出来は?」

「えっ? あっ……はい、平年通りです」

「そう……鏡よ鏡、ごきげんよう」



しばらくして、予想通りキャノーラ地方の割譲要求を突きつける書状が届いた。

よりによって一旦は持ち直した陛下が再び体調を崩し、床に就いたタイミングで。

呼吸も苦しそうな陛下にこんなことを聞かせるのは忍びないけれど、ベッドの脇に侍り書状を読み上げた。


「土地より食料が欲しいんだろう。古来兵隊さんというのはよく食べるもんだ。断るんだよね?」

「当然ですわ。カランコエ家には正当な跡取りがいます。代替わりの際の法定相続分以外はユーフォルビア姫に権利はありませんわ」


それだけだってたいした財産なのだけど。さすがお金で爵位を買えるだけの豪農、下手な貴族など足元にも及ばない裕福っぷりだ。


「グロリオーサはやせた土地しか持たない軍事国家。軍事力は一流でも土の恵みには素人です。彼らの農業政策ではキャノーラ地方の生産力を維持できませんわ。そうなれば大陸中で穀物の値段が高騰し、貧しい国は二年で深刻な飢餓状態に陥ります」


我がガルデニア王国は大陸の穀倉地帯。実り豊かであれば大陸中に食べ物が行き渡り、戦場にすれば大陸中が飢える。そういうところなのに。


ストレチアなら、ここを焼き尽くしても平気な顔をしている。自分は食べるものに困りはしないから。そういう人間性だ。


陛下の寝室を辞して謁見の間へと向かう。既に大臣や主だった諸侯は集結していた。


「将軍! 手筈通りに!」

「御意!」


ユーフォルビア姫の結婚が知らされた直後から二種防衛準備態勢を敷き、セットアップを済ませていた軍を起動させる。


「外務大臣! 急ぎ教会に密使を!」

「整っております」


教皇に密使を送り、これは神の前で誓った国境を侵す行いであり、大陸中が飢えに晒される危機だと訴える。

教会は日和見で勝った方の味方だから支援は期待できないけれども、主張を表明しておくのが肝要だ。

こちらの優位で戦況が一瞬でも膠着した瞬間に、停戦に乗り出してもらわなければ。


敵が得意とする戦法は機動力を生かした電撃作戦。ユーフォルビア姫をさらった速度を考えれば一刻の猶予もない。


「鏡よ鏡、“妖精たち”を集結させなさい! 総力戦よ!」



まだ緒戦? いいえ、軍事力で劣るこちらは初めに全戦力を投入して叩き潰さねば勝ち目はない。

ガルデニアの国民のため、大陸の食卓のため、そしてユーフォルビアのため、負けるわけにはいかない。


狙うは総司令官、第一王子ストレチアの首ひとつ。



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投稿側になるのは初心者で、ここまでヒイヒイ言ってどげんか体裁ば整えやっと軌道に乗り、改めて創作論ば読み始めたところ「文末に何も書かないのは別れの挨拶を疎かにしているのに似る」ちゅうことば知りました。


「1人でも多くの読者にカクヨムを読んでもらい、1つでも多くレビューいただくにはどうすればいいか?」/作者 婆雨まう(バウまう)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881752320


今まで失礼いたしました。


読んでくださってありがとうございます!

もし少しでも気に入ってくださったらば、これからもよろしくお願いします。


細かいネタは近況ノートば入れちょります。


♡とか、★とか、あったら嬉しかーーー!

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