第5話 白雪姫と隣国王子ストレチアとの運命の出会い
ユーフォルビアはすっぽんぽんになって腰まで清廉な水に浸かり、水遊びを楽しんでいた。
その可憐さ、羞恥心のなさはニンフのごとし。
ガサガサッ!
「誰っ?」
茂みが揺れる音に振りむけばそこには!
「おっ……王子様……?」
金髪長身、金モールで飾られた豪華な赤い衣装に身を包んだ端正な青年がいるではないですか。
全身から漂う気品が「私は正真正銘の王子様です!」と言っている。
案の定、青年の背後から複数の茂みをかき分けてくる足音と「王子様ー!」と言う声が聞こえてきた。
「王子様ー、こちらにおられましたかー」
「ややっ、怪しい女!」
「さてはー男を惑わす魔物だなー!」
なぜか棒読みの兵士たちは王子様の前に立ちはだかり一斉に弓や剣を構えた。
「止せ」
王子様は一歩前に出て手をかざし、武器を下ろさせる。
「なんて美しいんだ……こんなにも綺麗な魔物になら魅入られても構わない。いや、もう既に……」
着衣のままざぶざぶと泉に入って、全裸のユーフォルビアの両手を握る。
「美しい方、私の妃になってほしい」
「はいよろこんで」
0.1秒の即答であった。
こんなにとびきり顔のいい王子様が悪い人なわけはない。お互い王族なのだから誰に文句を言われる筋合いもない。
断る理由なんてどこにもないのだ。
ユーフォルビアはそのまま王子の馬車へと招かれ夢のような一夜を過ごし、お互い身分を明かし合った。
青年はガルデニアの隣国グロリオーサ帝国の第一王子ストレチア。今、若い女性の間で一番人気のイケメン王子だった。
「私はもう片時も姫と離れられそうにない。このまま国へ連れて帰ります。ガルデニアの王城には使いを出しておきますよ。帰ったらすぐ結婚式を挙げましょう」
「夢みたい!今まで生きてきたうちで一番幸せ。お義母様には意地悪をされたけど、お陰でこうして巡り合えたのだから感謝してるの」
「姿だけではなくお心も美しいのですね」
「嫌だわ、王子様ったら」
◇
二人がイチャイチャしているその頃、別邸は凄惨な有様になっていた。
家庭教師たちにも腕に覚えのある者はいたが、完全武装の強襲部隊に奇襲されてはなす術もない。
まず護衛の狩人が不意討ちで捕らえられて二階のテラスから吊るされ、男は防水袋に押し込まれたのちに鈍器で頭蓋骨を潰され、女は散々弄ばれた後で崖から突き落とされた。
野生の動物が多く生息する場所だ。
異常事態に気づいた本国から使者が来る頃には襲撃の証拠は全て隠滅され、それぞれ別々の場所に捨てられた家庭教師たちは全身をバラバラに持ち去られ、跡形もなくなっていることだろう。
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