Ⅰ 何処へ…………。

   何処へ…………。

       Ⅰ

 

 

 俺が地獄か天国かを考えていた時、体が降り動かされた。前に横に軽く体が揺れる。あぁ、此処は、地獄なのかな? きっとこのまま揺さぶりが大きくなり、体が二つに捻れて俺は地獄に落ちるんだ。と体を硬直させていると。聞いたような声が聞こえてきた。

 

 

「お客さん! お客さん! もう起きたらどうですか?」

 と、女将さんの声がする。俺の布団を大きく揺さぶり、繰り返し起こそうとしている。

「お客さん! お客さん! 起きてくださいよ」と言う大声で布団を大きく降らしている。俺はビックリして、布団の上にからだを起こした。枕元ではスマートフォンから花みずきが流れている。

「お客さん! どーしたかね? 悪い夢でも見たかね、顔中汗だらけだよ」

 確かに俺は、顔中汗だらけだった。俺は飛び起きて、何だ夢だったのか。と安心した。天井をそっと見ると、春日井さんが張り付いていた。

『春日井さん❗』と呼び掛けたが、何の返事もなかった。俺はびしょ濡れの顔で起きて、寝巻きのまま、廊下の洗面所に行き、ゴシゴシと顔を洗った。

「じゃあお客さん、七時半に朝食を持ってくるからね」と、言うと階下に降りていった。フゥー、助かったんだな。さっぱりしたところで、窓を開け、先ずタバコに火を付け一服した。あ~、良かった。夢だったんだ。ひょっとして春日井さんのいたずらだったのか? と、天井を見上げた。

「違うよ、イタズラではない❗ 勇二。お前の本当の人柄を引き出してやったのさ。もうお前はこれで大丈夫だ。大阪の両親のもとに帰るんだ! 親孝行するんだぞ!」等と訴えかけてきた。じゃあ、あれは夢ではなかったのか? 

「そう言うことだ」

『しかし、俺は死んでるはずじゃないか?』

「そうじゃない、これでいいのだ。お前は勇気のある本当にいい奴だよ。サラバだ……」

『そうなのかな? 自分でも良く解らない? 俺が此処広島にいるということは、やっぱり夢だよな』

 そう考えているうちにタバコの二本目に火を付けていた。窓から見える景色は壮大で朝早くだから気持ちいい。そうだ、と思い、テレビのニュース番組を探して付けてみた。テレビでは福岡の事故の事等何もやっていなかった。そ―だよな。

 そうしているうちに、女将さんが朝食の支度に二階に上がってきた。

 

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