Ⅵ
Ⅳ
どの位の距離を撥ね飛ばされたのか解らないが、俺は男の子をしっかり抱えたまま数メートル先のアスファルトの上に、頭から落ちた。えぇ、俺はこんなところで死ぬのかな……。と考えた。意識がどんどん遠くなっていく、そのなかで回りの人の声が聞こえた。子供は大丈夫だぞ。かすり傷程度だ!等と微かに聞こえていたから、子供は助かったんだな。と安心した。俺も死ぬ前に一つはいいこと出来たよ。と暗闇となったところで、考えた。親父の顔が浮かんでは消えていった。今度はお袋の顔が現れては消えていった。俺が手を伸ばしても届かない❗ そして辺りは漆黒の闇に包まれた。
「此処は、疑獄なのか? それとも天国?」
闇のなかに赤い小さな点が光っていた。だんだん近づいてきた。
『おい、勇二! 良くやったぞ。それがお前の本当の姿なんだ! 忘れるなよ。もう俺は必要なくなったから広島の家に帰るよ』と言って、赤い点は小さくなって消えていった。
「おい、春日井さん❗ 待ってよ、俺は此処で死ぬのか? 此処は、地獄か? 天国か? おい、待てよ~」と呼び掛けたが春日井さんは、消えてしまった。俺はどうなるのだろう。春日井さんはこれが俺の”本当の姿だ“って言ってくれたけど。もう遅いよな、今ごろ教えてくれたって。親父やお袋には何一つ親孝行の真似事も出来なかったな……。そうして辺りは漆黒の闇になった。
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