Ⅲ

 

 目が覚めたときには、下関駅を過ぎていた。もう小倉駅で途中下車する気持ちも無くなっていた。暫くして、博多駅に着いた。大きな駅にビックリした。迷いそうになりながらも改札口からコンコースに出てみると。沢山の人で驚いた。大手のデパート等が博多駅に一緒に入っているのだな。兎に角人が多いし、何故か美人やが多い。新大阪駅にはこんなに美人はいないよ。博多美人とはこの事だな。それにしても俺のお袋は美人じゃないけどな。何て馬鹿なことを考えながら、観光案内所を探して、博多のパンフレットを手に入れた。そして、大濠公園までの道のりを見た。他にも海の中道公園や能古島にも行ってみたいな、と思ったが、先ずは大濠公園に行こう。

 

 パンフレットを見ると、地下鉄福岡市空港線で行けば直ぐだなと、地下鉄空港線乗り場を探した。人に聞きながら道を教えてもらい。大濠公園までの切符を買って地下鉄に乗った。大濠公園駅までは直ぐに着いた。かつての福岡城の跡地だ。もう城の面影も薄く、城址として公園になっている。駅前の通りを渡ると、公園内に入って行くかなり広い堀があり、堀の横には色々な施設が並んで立っている。ブラブラと大きな池(堀あと)を歩いていく、堀の中心にも中島があり、多くの人が散策をして入る。俺が堀の縁にある歩道を国体道路方向に歩いていると、洒落た建物があった。近づいてみると、福岡市立美術館があった。重厚な雰囲気なので、俺もその美術館の前に立った。折角だから

別に興味もなかったけれど、中に入ってみることにした。入り口で週完了を払い。その切符を入り口で立っている人に、に切符を見せ、彼女は切符を半分契りとり、その半券を返してくれた。俺はその半券を何となく受け取ってズボンの右ポケットに突っ込んだ。そして、美術館のなかを見て回った。流石に福岡県立だけあって、多分有名な人の美術作品が沢山並んでいるのだろう。と言うのも、俺には美術の作品なんてなにも解らない。でも、こういう高尚なところをみてまわると、ひょっとして俺にも何かが伝わってくるかもしれない。館内は勿論水を打ったようにし~んとして、厳かな雰囲気だった。アベックなのだろう、ちらほらと男女のカップルが散見された。壁画だけでなく、彫刻も飾ってあった。良く解らないけど、こうやって見ていると、なぜ自分にはこんな才能がなかったのかと、不思議に思った。毎日なにも考えずにのんべんだらりと毎日を過ごしていては、こんな才能が身に付く訳がないよな。俺は大変感動し、興奮して美術館を出た。

 そこから少し進むと、国体道路に出る。道路の向こう側にはNHKの福岡市局が聳えている。一寸中を見学して見ようかな、と思い道路幅が広いので、横断道路の信号待ちをしていた。そばには親子で遊びにきているのだろう、両親と五歳くらいの男の子が楽しそうにならんでいた。かわいい盛りだろうが、男の子は興味深くてチョロチョロするから、気を付けろよ! 信号待ちをしているは人は、こちらの道路にも、向かい側の道路にも沢山の人が沢山いた。その時俺から見て、右側の道路を赤色の軽自動車が結構なスピードで飛ばしていている。しかもどうも若い男らしく、スマートフォンを眺めながら運転している。何か嫌な予感がした。その車が近づいてきたとき、信号は赤信号になり、歩行者道路側は青に変わった。その時、さっきまでチョロチョロしていた、五歳くらいの子供が横断歩道に飛び出した。ああっ、危ない❗ 軽自動車は止まる気配もない。このままでは、男の子は跳ねられるだろう! 皆が『あっ❗』と大声をあげたとき、なぜか解らないが俺の体が自然に動いていた。男の子をお腹にくるむように抱え込むと、右手で頭をギュット抱き締めると同時に、俺の背中に激しい衝撃が走った。

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