Ⅱ
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その時突然春日井の声が頭の中に響いた。
「今日は何処へ行くのかな?」
『うるさい! 何処でもいいだろ』
「勇二! お前まだ引きずってるな~、いい加減にしろ」
『もう、良いんだよ。俺もダメ人間を自覚し始めたよ。どうせ何処かで野垂れ死にでもする運命なんだろな』
「…………。」
『さて、気の向くまま、足の向くままだな』
俺は身支度を整えて、黒い鞄を背負うと、階下に降りていった。帳場で女将さんに宿泊代を支払うと、玄関を出て行った。女将さんは、
「有り難うございました!」と言って頭を下げていたが、俺は軽く背中越に手を軽く降って、民宿を後にした。急ぐ旅でもないし、とぼとぼと歩きながら先ずは広島駅を目指した。広島駅に着くと、コンコースにあるベンチに座り、何処に行こうかと考えていた。この流れだと福岡方面だよな~と思った。そうだ、福岡市に行ってみよう。小倉にも興味があったけど、昔一度だけ俺が小さい頃、福岡市に両親と一緒に連れられて行ったことのある思い出がある。あれは何で行ったのかな~と思い出そうとするが、思い出せない。親戚の結婚式だったかな? 何せお袋は福岡県出身だ。大きな池がそばにあった結婚式場だったな。何て所だったかな? まぁ、いいや。よし博多に行ってみよう。と、博多駅までの切符を買って、改札を抜けていった。新幹線乗り場から博多行きの自由席の車両に乗車し、何気なくぼ~と外を眺めていたが、山陽新幹線はしばらくトンネルばかりで、窓に写る自分の馬鹿面しか拝めなかった。何故かふと、淳子の顔や小笠原麗子の顔が浮かんできた。淳子は宮島で会ったから解るが、何で小笠原の顔が出てくるんだろう? 何だか寂しいな……。俺、今でも彼女の事を意識してるんだな……、心が沈んでくる。ひょっとして、俺は小笠原のことが好きなのかな。俺は慌てて首を横に降りながら、いや、そんなことはない。そんなことはない~と思った。しばらく寝てよ、博多駅が終点の列車だから、乗り過ごすことはないだろう。と、俺はまた、ウトウトとし始めた。
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