Ⅲ  


 翌日、晴れ渡った空を見上げ、爽やかな風を顔に受けながら、俺は登校した。そして佐久間淳子を呼びつけて、

「おい、淳子! ちょっとこっちに来いよ」淳子とは少しだけ付き合っている関係であった。

 淳子は空いていた俺の前の席に座ると、

「何よ、きやすく淳子なんて呼ばないでよ。私はあんたの彼女じゃないんだからね。何の用事よ」

「お前、あの女生徒、色の白い肌をして、セミロングの髪をした小笠原と言ったかな。あいつどんな感じの女だ?」

「あぁ、小笠原麗子おがさわられいこちゃんね」

「麗子と言うのか」

「そうよ、お嬢様よ。お父さんもお母さんも医者なのよ。成績は確かにいいみたいね、何しろ私立桐蔭中学校からの入学だものね。トップ入学だったらしいわよ」

「何だと! 桐蔭中学校だと! エリート中のエリート中学校じゃないか。何でこんな高校に入ってきたのだ?」

「私もよく知らないけど、何でも噂では自宅から一番近い高校だかららしいよ」

「何だって、家から一番近いのが理由だって! 意味解んね」勇二は益々興味が湧いてきた。

「それでよ! お前に頼みがあるんだ。小笠原さんの都合のいいときでいいからさ、一度彼女と一対一で話し合いがしたいんだ。だから聞いてみてくれないかな?」

「ふ~ん、私より彼女の方が気になるんだー」淳子は俺を斜め見しながら皮肉に言った。

「いや、良いとかそんなんじゃないんだ。昨日の帰りに見た理科室のことを淳子に小声で話し、一寸興味を感じただけだよ」

「へー、そんなことしてたの? 医学の関係じゃないの」

「他にも話してみたいことが色々有るんだよ」

「まっ、解った。一応聞いてみるね。返事を貰えるかどうか知らないよ」そう言うと、小笠原さんのところに行って、二人で話し合っていた。”相手が俺だからな。無視されるだろうな~"と頭の中では考えていた。淳子は小笠原さんと、暫く話していたが、そのうち俺のところに戻ってきて、不思議そうな顔で言った。

「以外ね~、絶対断ると思ったのに、安部川くんのお望みどおりに良い返事が聞けたわよ。と俺を焦らすように、へ、へ、へ、と笑って彼女の返事を伝えてくれた。

『今日の昼休みに、食事の後図書室で待ってくれていたら、私も図書室に行くから、必ず独りで待っていて』だってよ! 二人で話す勇気がある? といった顔をして面白がっていた。

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