Ⅱ 


 それは、高校一年の春、入学の時のクラス分けで、あのクラスメートに出会ってからだ。何とも不思議な少女だった。あの少女確か『小笠原おがさわら』と言う名前だったかな? 俺と同じで、何のクラブにもはいってなかった。帰宅しようと思って、理科教室の前を歩いているときだった。小笠原が理科教室の中に立って、人骨の標本の前にじっと佇んでいた。じっと眺めてたかと思うと、今度は骨を触り始めた。そして心臓の位置を確認すると、自分の身体でもその位置を確認している。

「おい! 何をしているんだ」

 俺が声をかけると、クルリと身体を翻えし、まるで蛇のような目をして俺を睨んだ。俺と目と目があった瞬間、俺は心臓を掴まれたような錯覚に堕ちた。そして、俺を見た小笠原は、

「……何だ! 何か言いたいことがあるのか? 確かお前は安倍川だな」

「そうだ、安倍川だ! 此処で何をしている」

「何をしているだと! お前には関係の無いことだ」

 そう言うと、理科室から出てきた。スタスタと教室から立ち去る姿には、何か威厳のような雰囲気を醸し出していた。姿勢よく歩くその姿格好は、普通の女子高生と変わりはしないのに。しかし、何故か俺は彼女に引かれていった。引力でもあるかのように吸い込まれるように、その仕草の一つ一つが記憶の中に残るようになった。何をしていたのだろう?……。明日、以外と彼女と多少仲のよい、俺と同じ中学校を卒業して顔馴染みの佐久間淳子さくまじゅんこに話を聞いてみて、明日の行動を考えてみよう。そして、俺も帰路に着いた。

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