第197話 ファンタジー金属。
さて、次の展示室には何があるのかな?
「
「にゃー、『インゴット展示室』って書いてあるのにゃ」
「なんだと!」
美剣曰く、この先にはここのダンジョンで採掘できる鉱石のインゴットが展示されているらしい。
インゴット? インゴットって、あのインゴットだよな?
ここのフロアからは、銀とか金とかも産出されていたはずだ。
ってことは、純金のインゴットとかも展示されているってことか?
そんなことを考えながら歩みを進めていくと、
「……本当にありやがった」
展示室の中にある、簡易なガラスケースの中には金や銀のインゴット、日本語で言えば金の延べ棒が、ピラミッドのように10本ひとまとめで普通に置かれている。
「1㎏の金地金が10本なんていくらするんだ……? しかも、こんな無造作に置かれていて、盗まれたらどうするんだ?」
金は1gあたり約1万円と換算して、それが1㎏だから……
「一本当たり約1,000万円ですね。それが10本……1億ですってよ。先輩。」
人というのは己の理解が及ばない状況に陥ると妙に冷静になる生き物のようで、まさに今のマナミサンがその状態になっているようだ。
マナミサンの態度を見て少し我を取り戻し、周囲を見回すと、そこには金だけでなく
「ん? なんで
「にゃー、『金銀パールプレゼント』って書いてあるにゃよ?」
「昔の洗剤のCMかよ!」
などとツッコミを終えてひと段落したのは良いのだが。
「なあ、美剣? 本当にプレゼントって書いてあるのか?」
「にゃー、『金銀パール以外もご自由にお持ちください』って書いてあるにゃよ?」
「洗剤たくさん買って応募しろとかは書かれてないですか?」
「よくわからないけどそんなことは書いてないのにゃ」
ふむ、美剣は冷静だな。まさに猫に小判といったところなのだろうか。
「ご主人? にゃにか失礼なこと考えてないかにゃ? 美剣は、お金が大事だってことはアヒル以上に知ってるにゃよ?」
「すまん……」
「あ! 先輩! あの綺麗な色の金属ってなんていうんですか?」
マナミサンが指さす先には、
まるで日光が射した澄み切った海の青色のごとく、薄く青銀色にほのかに輝く金属のインゴットがあった。
「にゃー、おりはるこんって書いてあるにゃよ」
「おお! これがオリハルコンの実物か!」
まさかこの目で見ることが出来るとは。
ダンジョンって潜ってみるものだなあ。
そのオリハルコンの隣には、うっすら銅が混じったような銀の輝きを放っているミスリルが。
そして、さらに隣には燃え盛る炎を想起させる赤銅色に輝くヒヒイロカネ。
まさにファンタジー金属のオンパレードである。
「あー、
「お義姉さんとか、金のインゴット見てどんな反応しますかね?」
「にゃー、みんなに会えるの楽しみなのにゃ」
ちなみに、美剣の通訳によるとこれらファンタジー金属ももちろん『プレゼント』の対象になっているという事だったが、オレたちはあえてそのプレゼントという単語を無視して振舞った。
だって、考えても見て欲しい。
いきなり数億円あげるとか言われて「はいそうですかありがとう」なんて割り切れるもんじゃない。
そんなこんなで精神衛生をどうにか保ちながら次の展示室に向かう。
「美剣、次のフロアには何が展示されているんだ?」
フロア入り口の案内板を読んでいる美剣に問いかける。
「にゃー、ここでとれたきんぞくのかこうひんこーなーって書いてあるにゃよ」
ふむ、加工品か。
男の子としてちょっとわくわくするな。
◇ ◇ ◇ ◇
「うーん、希少金属の無駄遣いなのでは……」
そこの展示室に並べられていたものは、プラチナで作られた
まあ、100%銅製のやかんとかは許してあげよう。
それにしても、加工技術が高いことはクマの置物なんかからもうかがえる。
なんせ、クマが加えた鮭の表情まで豊かに再現されているのだ。
木彫りでなく、金属加工でここまでできるとはもはや芸術の域だな。
農具や民芸品のコーナーを抜けると、待ちに待った武器や防具のコーナーがある。
「おお、これなんてまさにファンタジーだな」
アンデッドに特攻があるとされる、持ち手まで純銀で出来たレイピアとか、どっかの聖闘士が着ているような純金の鎧とか。
そんな心躍る製品を見ていたところ、
「「先輩(ご主人)!!!」」
なにやらマナミサンと美剣が興奮した様子。
「「これを見てください(見るのにゃ)!!」」
二人が指さすその先には、
ヒヒイロカネで作られたと思われる日本刀と、手甲に爪が取り付けられた武器が鎮座していた。
『これもプレゼントなのよ! 有効に使うのよ!』
というメッセージと共に……
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