第191話 鹿爪ストーンダンジョン攻略③
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マナミサンと
すでに1、2階層を抜け3階層に突入している。
オレはと言えば……運転だ。
安全確実に軽トラを運転している。
なんせ、荷台には100を超える自衛隊の皆様と、大量の火器弾薬が積まれているのだ。
自然、安全運転になるのもうなずけるというものだ。
そして、そんなオレの耳には自衛隊の皆さんの話し声が聞こえてくる。
「すごい剣裁きだ。ほれぼれするな」
「そうだな、なんせ美少女だ。見ていて目の保養になるな」
「おい、あっちのネコミミ付けた女の子もイケてるぜ!」
「じ、自分は! ネコミミ派であります!」
好き勝手なこと言いやがって。
あれはどっちもオレの物だと声を大にして言いたい。
まあ、そんなこと本当に大声で言ったらあの二人(一人と一匹)がルパンダイブしてきそうなので言わないが。
いくらお国を守る国家公務員とはいえ、その中身は独身のうら若き男性共がほとんどなのだ。
これくらいの軽口をたたくのは仕方のないところだろう。
だが、そんな声の中には、
「むう……あれは丸舘鳳高校の
ふむ。
そういえば、以前にマナミサンが言っていたことがあるな。
高校時代に剣道で一度も勝てなかったライバルが自衛隊にいると。
だが、あの時の話では確かそのライバルは釧路ダンジョンに配属になっていると聞いたのだが。
この人は、その時の話の人とは別の人なのかな?
「お願いします! 小隊長! あの早坂は、わたしが県大会の決勝で3年間破れ続けた相手なのです! 大学に行ってからリベンジをと思っていたのに、どこの大学にも実業団にもその名前はなくて! ここでようやく再開できたのです! 手合わせとは言いません! どうか、わたしにも出撃の許可を!」
執拗に出撃の許可を求める一人の女性自衛官。
マナミサンが言っていたライバルとやらは、たしか全国大会で勝てなかった相手と言っていたから、この人はさしずめ県大会のライバルの人といったところか。
で、出撃を求められた小隊長が、大隊長である隊長ズの片割れに目線で問いかけている。
その目線は、「許可しちゃってもいいっすかね?」ってな感じのお伺いの目線だ。
で、その目線を向けられた隊長ズの片割れさん、今度はオレの方にお伺いの目線を向けてくる!
「……いいんじゃないすかね?」
「……その
「競い合って戦えば、殲滅が速くなるかなと思って」
「……本当のところは?」
「考えるの面倒くさい」
「同意する」
という事でその女性自衛官、長崎しずえは出撃許可を与えられたのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
「早坂! 久しぶりだな!」
「……はい?」
「わたしだ! 忘れたか!」
「……いや、そんなことは(やっばい、この人誰だっけ?)」
「高校卒業以降姿を見つけられずに心配したが、こうして再会できてよかった! まだ剣は手放していないようだな!」
「あっ、はい(高校? 剣道関係? こんな人いましたっけ?)」
「だが、わたしだってあれから大学、自衛隊と剣を振るってきたのだ! もう早坂には負けないぞ!」
「ん? (カチーン! この人、今なんて言いました?!)」
「いますぐ再戦したいところだが、まずは、この魔物どもをやっつけてから――」
「いいでしょう! 今すぐ手合わせ致しましょう! 先輩! 美剣ちゃん! 魔物はお願いしますね!」
おいおい、なんか始まっちゃったよ?
「防具をつけなさい! 正式な作法で叩きのめしてあげます!」
おおう、マナミサンがお怒りだ。
マナミサンが昔の自称ライバル? と立ち合いを始める流れになってしまったので、オレも盾とハルバードを装備して魔物の殲滅に駆り出される。
周りを見ると、あーあ、しょうがねえなあという表情で隊長ズ(自衛隊)とか、小隊長の人とかがあきれ顔だ。
そして、なぜか用意されていた剣道用の防具を両者が身に着けると――
「あら? あなたは丸舘桂城女子高の長崎さんではありませんか? 自衛隊にいたのですね?」
「え? 今更? さっきわたしの素顔、見てたじゃないの?」
「はい。正直、さっきまではあなたがどなたかわからなかったのですが……その面体を付けた姿を見てわかりました! 県大会の決勝で何度も戦った長崎さんですね!」
「なんで面をつけたときのほうがわたしだってわかるのよ?!」
「え? だって、高校時代面越しにしか会ってなかったじゃないですか? その面は長崎さんです!」
「……面で相手を識別するのかよ?!」
「さあ、いざ立ち合いましょう!」
この戦いの結果は、マナミサンの一方的な勝利で幕を閉じた。
そして、攻略部隊はそんな二人を他所に4階の奥まで攻略を進め、ほぼすべての雑魚魔物を討伐したところでその日の攻略はお開きとなり。
その夜、マナミサンと美剣、長崎さんはおかず抜きの刑を受けたのであった……
「にゃー……」
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