第190話 鹿爪ストーンダンジョン攻略!②

「全員乗車!」


「「「「「YAーーーーーー!!」」」」



 隊長(自衛隊)さんの合図で自衛隊の隊員たちが軽トラの荷台に乗り込んでいく。


 なんだろう、この図はどこかで見たことがあるぞ。



 あれだ。国民的家族アニメのエンディングで、どう見ても小さな家のなかに愉快な一家が7人と一匹全員入っていくあのシーンだ。


 まあ、あのアニメと違うところは全員中に入ってもあの家のように軽トラの外郭が歪んで揺れることはないのだが。



 1隊5名の分隊が3分隊で構成される小隊15名。


 今回動員された小隊は8。


 この120名プラス大隊長と各小隊長、伝令含む137名の自衛隊員が今回の作戦に参加する。


 それに加えて、オレと真奈美と美剣。そして軽トラだ。



 通常は隊列を組んで行軍するらしいのだが、今回は皆さんを軽トラでキャリーします。

 

 で、ダンジョンの入り口の広さは軽トラが丁度通れるような幅と高さで最初の関門は無事クリア。


 オレは自衛隊の皆さんと火器銃器満載の軽トラを運転してダンジョンに臨む。


 これ、オレが軽トラぶつけて火花とか散らせて引火させたら大爆発で全滅だよな?



 怖いことは考えないようにしよう。



 そして進入した1階層。


 目の前には1階層の魔物の群れ。



 このダンジョンはフィールド型で、フロアの遠くまで見渡せるので敵の姿も良く見える。


 ちなみにこのフロア。第一印象は、「月面」。



 石がロケットのように並べられたこの遺跡にちなむかのように宇宙チックである。


 この光景を見ると、この遺跡の正体は『日時計』ではなく、なんらかの存在と交信を交わすための『祭祀場』なり、もしくは本当に宇宙とかから来た存在が何らかの目的をもって作った施設なのではといった思いに駆られてくる。



 だが、そんな過去のロマンに思いを馳せている場合ではない。


 目の前には、オレたちの命を狩ろうとする存在が群れになって迫ってきているのである。



「まるで『グレイ』だな!」



 とある大国の軍事基地に墜落したとされるUFO。


 そのUFOに搭乗していたと目される宇宙の生命体。


 その身長は子供のように低く小柄で、目は大きい。


 ただし、ここストーンダンジョンの1階に出現した魔物は色味が異なっており、銀色基調ではなくみどりがかっている。



「たしかにグレイですけど、この色だとゴブリンにも見えますね」


「にゃー、ご主人、殺っていいかにゃ?」




 狭い助手席に詰め込まれているマナミサンと美剣みけがオレの声に応える。



「ちょっと待て」


「にゃ?」



 そんなやり取りの最中さなか


 自衛隊の皆さんが戦闘準備に入る。



「第1小隊戦闘準備! 弾丸節約のためサーベル使用! 全員、抜剣!」


「「「「YAーーーー!!!」」」」



 そして、グレイのような魔物の群れに切り込んでいく自衛隊の第1小隊の皆様方。



「まずは、お手並み拝見といかせてもらいましょう」



◇ ◇ ◇ ◇



「やあっ!」


「はっ!」



 自衛隊の皆様はよく戦っている。


 ダンジョン発生前は、サーベルの装備は儀仗等に用いられる儀礼刀のみで戦闘用ではなかった。


 だが、ダンジョンという特殊な環境下では刀剣による戦闘スタイルが求められることになり、武器として正式採用され、訓練のなかに刀剣術が盛り込まれることになった。


 日本刀の刃を模したサーベルを使用する『刀剣術』は、スポーツである剣道とは少し趣を異にするが、基本となる動作や儀礼は同じであり、当然のように剣道に秀でている者、経験のあるものに一日の長がみられる。



 そんな訓練を受けた自衛隊員が今、そのサーベルをもって宇宙人のような魔物を狩っている。



 そんな光景を見せられて。


 うちの暴走娘が黙っていられるわけがないよね?!



「戦闘班交代用意! 第2小隊準備!」


「「「「YAーーーー「わたしが行きます!!「美剣もにゃ!」」」」」」




 第1小隊が第2小隊と戦闘を変わろうとしたその時、うちの殲滅姫と殺戮姫が飛び出していった!



「おいおい、あんちゃん? 大丈夫なのか?」


「隊長さんも熊岱市のダンジョンであの二人の実力は見たでしょ? 強さ的には問題ないかと」



「ああ、確かにな。だがあんちゃん?」


「わかってます。独断での動きは軍隊としては最悪です。罰として今晩あの二人はおかず抜きで白飯のみにします」



「かわいそうに。せめてがっこ漬物の1枚くらいつけてやれよ?」


「この戦い次第かと」



「じゃあ問題はねえな!」


「はい、自衛隊の皆様方は、体力を温存させておいてください。4階まで、あの二人(一匹含)が露払いさせていただきます。」



「そうか。お言葉に甘えるぜ。ところであんちゃんはどうするんだ?」


「……オレには軽トラの運転という崇高な使命が……」



「……よろしくな」


「まかせといてください……」







「『殺陣たて』!!!」


「『ニャニャニャニャーにゃにゃにゃにゃー!!!』」





 隊長さんと不毛な会話をしている間にも、マナミサンと美剣は次々とグレイのような魔物を狩っていく。


 月面のようなフロアで繰り広げられるその殲滅劇は、さながら低重力下での演武を思わせる動きであった。













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