第189話 鹿爪ストーンダンジョン攻略!①

「さーて、出発するか!」


「「はい(にゃ)!」」



 オレたちは今日、隊長ズ(自衛隊のほう)からの依頼を受けて鹿爪市の環状ストーンダンジョンの攻略に向かう。


 鹿爪市は、丸舘市から車で約1時間の場所にあり、熊岱市とはほぼ反対方向。


 その市には、石がまるで宇宙ロケットのように建てられて丸く並べられている遺跡群がある。


 その歴史的にも価値のある遺跡群のど真ん中に県道が建設されているという、当時の道路行政の担当者は何を考えていたのか誰もが頭をかしげるような遺跡でもある。


 円環状に石のロケットのように建てられた理由等はいまだ考古学者らが研究中である。今のところ日時計説と何らかの祭祀に使われたという説が有力だとか。




 その遺跡のど真ん中に発生した国有の環状ストーンダンジョン。


 環状ストーンダンジョンは、最高深度も15階層以上と目され、出現する魔物も宇宙人的なフォルムの強い個体が多く、自衛隊が攻略にてこずっている。


 ダンジョン発生以降、2年以上が経過しているがここの5階のボスが手ごわく、そこが突破できないとのこと。


 その間も、5階層までの魔物の間引きはそれなりに行なわれてはいたが、それ以降の深い層に立ち入ることが出来ず、ここ最近は魔物のPOP間隔が日に日に短くなってきていたようだ。 


 いまだ人的被害は出ていないが、このダンジョンでは、発生当初に魔物がダンジョン外に出てきたことが確認されていることもあり、魔物の溢れ出しオーバーフロー、もしくは集団暴走スタンピードに発展する可能性が高いと判断されたとのことで、間引きを兼ねた大規模な攻略が予定され、それへの協力を打診されていたのだ。




 自宅から軽トラを走らせること約1時間。


 途中のコンビニで朝食を摂り、比較的のんびりした雰囲気で現場に到着したのだが。




「3列横隊――! 整列!」


「「「「「「YA----!」」」」」」



「ダンジョン攻略の協力者に―――――、敬礼!」


「「「「「「YA----!」」」」」」




  自衛隊の皆様方はとても規律正しく整列してオレたちを待ちながら待機しており、さらには敬礼まで受け、肉まんをほおばったままその場所に到着したオレたちはとてもバツが悪かった……。



◇ ◇ ◇ ◇


「おお! あんちゃん! 来てくれたか!」


「お世話になります」



「なーに! 世話になるのはこっちの方だ! よろしくな!」


ふぁいはいおろひふよろしくにゃ!」


「よろしくお願い致します」



「おお! 猫の嬢ちゃんも剣の嬢ちゃんもよろしくな! 肉まんうめえか? プロテインジュース飲むか?」


「いただくのにゃ」



 美剣がコーヒー風味のプロテイン飲料を不思議そうな顔をしながら飲んでいるのを尻目に、オレは隊長さんと打ち合わせに入る。




「で、あんちゃんの軽トラには、こいつらを積み込んで運んでほしいんだが」


 隊長さんが指し示す先には、ダンジョン内でも使用が出来る、電気的な制御を必要としない旧大戦時に使われていたようなガトリング砲1門と、いわゆるバズーカ砲が10門。それと木箱に詰められた弾薬類。


「隊員は全員小銃とサーベル携行で行きたいんだ。荷駄隊に人員を割くよりも全員攻撃で行きたい。1階から4階層までは隊員がローテーションを組んで雑魚敵を倒しながら弾薬補給する。で、5階層のボスには残弾全部一斉に飽和攻撃だ。策とも呼べない策だが、今のところこれしか方法がない。」



 隊長さんからの話だと、どうも5階のボスは銃弾がろくに効かず、また火炎放射にも耐性があるという事でいままで有効打がなく苦汁をなめさせられ続けてきた。


 サーベルの斬撃も通じず、幸い死者こそ出ていないものの負傷者は数知れず、四肢の一部が欠損したり麻痺したりと日常生活に支障をきたすレベルでの怪我人も多く出ているそうだ。


 その結果、戦闘に参加できる人員が減り、攻撃密度が減っていきながらも補充人員も儘ならないという負のスパイラルに陥っているそうな。


 それに加えてのダンジョンの活発化による魔物のオーバーフローの発生危惧。



 こういった経緯があり、今回の乾坤一擲の作戦実行に至ったとのこと。



「えーと、隊長さん。」


「どうした?」



「その作戦、一部変更をお願いしても?」


「聞こうか」



「はい。まずは、今回の作戦に参加できる全員、軽トラの荷台に乗ってください!」


「なに? 乗れるわけが……って広っ! なんだこの空間は!」



「軽トラがさらなる異質化を遂げました! 荷台の空間拡張が出来るようになったのです!」


「おおお! これなら全員乗ったうえに、銃器までも運べるな!」



「さらに!」


「さらに?」



「軽トラの周囲ではダンジョン内でも電気系統の動作が阻害されません! コンピューター制御の近代兵器も使えますよ!」


「なんと!」



「さあ、近代兵器を積むのです!」


「だが断る!」



「なぜに?!」


「この基地には近代兵器はない!」






「…………」






 このあと、みんなで旧型兵器を積み込みました。




「にゃー」

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