第184話 ダンジョン野営訓練。
お刺身おいしい。
無事に大トロがドロップして
おあずけをくらっていた分、美味しく感じるのかもしれないな。
ん? もしかして、空腹は最大の調味料という事で、最もおいしく食べられるタイミングでダンジョンがドロップのタイミングを調整した……?
まさかな。考え過ぎだろう。
ところで、美剣はイカやタコの刺身も食べているが、あれって大丈夫なんだっけか?
たしか、ネコは生のイカを食べると腰を抜かすとか聞いたことがあるのだが。
だけど、美剣はネギでも玉ねぎでもチョコレートでもバリバリ美味しくいただいているから今更なのか。
ほんと、なんでも食う猫だ。
それで、これからどうしようか。
ひつじさんのお話ではここから下の階層に行く階段は海の底にあって、まだオレたちはそこに向かうには早いようだ。
というか、早いも何も時間が経ったところで軽トラが海に潜れるとは思わないのだけれどもな。
「ご主人! もっとおさかな仕入れるのにゃ! 毎日おさしみぱらだいすなのにゃー」
美剣よ、少し落ち着きなさい。
「おさかなは美容にもいいらしいですからね? たくさん獲っていきましょう」
そしてマナミサンも魚介類乱獲に賛成と。
たしかに、地上に戻ったところで鹿爪市のストーンダンジョン攻略の日までにはまだ5日もあるし、とくにそれまでやりたいこともない。
熊岱市の購入したダンジョンへの手入れはじっくり時間をかけて行いたいし、陽介君たちの仕上がり次第という面もあるからまだ着手しなくてもいいし。
ならば、魚介類含めてトリニクや牛肉の食材集めをして3日くらいは野営の訓練を兼ねてキャンプでもしていこうか。
ということで、狩りました。
コカトリスからは焼き鳥素材が、ミノタウロスからはステーキ肉がたくさんドロップしたけれど、バーベキューコンロが無いので保留になった。
カセットコンロで調理できるものとして、この日の夕食はダンジョン産お野菜たっぷりのビーフカレーだ。
マナミサンではないが、確かにこれは旨い。売れる。
牛肉はもちろんの事、ダンジョン産野菜の味の際立つこと!
野菜嫌いの子供達でも喜んで食べること請け合いだな。
ご飯は妥協してサ〇ウのパックご飯だったけど、これがダンジョン産のお米だったらもっと美味しくなると思われる。
だって、お米ももらったんだけど飯盒なかったんだもん。
そしてまた砂浜でテントを張って一泊。
テントの外から聞こえるさざ波の音が心地よい。
ところで、今回の探索ではあえて軽トラの荷台ではなく、普通のフィールドにテントを貼って野営している。
このさきの鹿爪市ストーンダンジョンでは自衛隊と合同攻略になり、野営することも想定されている。
そんななかで自分達だけ安全なところで寝泊まりするのはなんだかなという事で、普通の探索者や攻略部隊の方と同じような体験をしておこうと思ったのだ。
当然、夜間の魔物の襲撃もあり得ないことではない。
交代で見張りを立てようかなとも思ったけれど、最近はホームセンターでも便利なものが売っているのだ。
魔物センサーというか、まあ普通のセンサーなのだが、半径数mの範囲に一定程度の大きさの動くものを感知すると警報音や振動で知らせてくれるというものが市販されている。
それをテントの周囲に設置して、警報音で飛び起きての戦闘にも慣れておこうという心づもりだ。
前の晩は、一回ほど警報音が鳴ってみんなで飛び起きてテントの外に飛び出した。
なんと、そこにはひつじさんがいた。
なんでも、オレたちが魔物に襲われないように交代で見張りをやってくれていたらしい。
ひつじさんはやさしいなあ。
だけど、オレたちも訓練だからとひつじさんに見張りをご遠慮申し上げた。
でも、結局その後はセンサーへの反応はなかった。
多分だけれど、ひつじさんは遠巻きにオレたちに気付かれないよう見張ってくれていたんだと思うんだ。
そこまでしてくれるのならこれ以上お断りするのも心苦しく、ご厚意に甘えることにしたが、そこで美剣から提案が。
「にゃー、ひつじさんにわざとせんさあ鳴らしてもらって、起きる訓練したらいいのにゃ!」
なるほど。
交渉は美剣に任せ、結果として次の晩は1回だけ起こされた。
外に出ると、それでも申し訳ないような表情をしたひつじさんがたたずんでいて、なんというか、面倒かけてごめんね。
で、翌日の朝。
朝食は、ミノタウロスからドロップしたローストビーフと、レタスとチーズを挟んだサンドイッチ。
チーズもミノタウロスからドロップしたという事は、あの個体はメスだったのかな? もちろん牛乳もビンでドロップしていた。
警戒してくれていたひつじさんにも食べて欲しかったのだが丁重にお断りされてしまった。
なんでも、ひつじさんたちは本来は『魔羊』という魔物で、魔素を吸収して生きているので食事は必要ないんだとか。残念。
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