第181話 レトロゲームの技。

 標識? に従って地下5階層に降りてきた。


 標識に書かれていた山と川も気になったけれども。


 そっちを周っていたらいつまでたっても探索が話が進まない気がしたんだ。


 絶対他にも標識とか気になる場所とか増えそうだったんだもの。


 ちなみに、4階層から5階層に降りる階段は、なんか洞窟の入り口みたいになってて『長歩風穴』って書いてあったんだ。


 それも丸舘市の名所の名前だよちくしょう。


 そこは、地下から一定温度の風が吹きでていて夏になるととっても涼しくて、天然のクーラーと言われているんだ。


 ほらみろ、さっそく話がズレて行ったじゃないか。



 ちなみに、階層をまたぐ階段には、段差の凹みにコンクリートのようなもので加工されて、ちょうど軽トラのタイヤの幅で通れるようなスロープに改造されていたよ。


 軽トラに至れり尽くせりだよまったくもう。





 で、この5階層。


 灌木や長い草が生い茂るフロアであった。


 長い草で足元が見えずらく、小さな魔物とかいれば見つけるのが難しそうで注意が必要だ。


 なのだが。


 例にもれず、このフロアもしっかりと草は刈られていた。


 ひつじさんたちはこのフロアでもきちんと仕事をこなしている様である。

 

 思わず草刈り機を振り回すひつじのシュールな姿を想像してしまった。


 まあ、実際は風魔法とか使っているんだろうが。



 ん?


 ひつじが魔法?


 今まで驚くことが多すぎてスルーしてしまっていたが、それってもしかして一番のツッコミどころだった?


 もういい。


 今更だ。


 いつかどこかですべての謎が明らかになるときが来るんだろう。


 その時にまとめてツッコんでやる。






 そして、ここに出る魔物はコカトリス。


 雄鶏と蛇の合成獣キメラだ。


 どうやらトリニクを落とすらしい。


 すでに美剣みけはよだれを垂らして臨戦態勢だ。


 

 

 刈られた草の間を抜けていくと、灌木の陰からニワトリのトサカが現れた。


「コカーーーーーーーッツ!」



 いや、そこは「コケーッ」じゃないのか?



「クックドゥードゥードゥー!!」



 どっちだよ!



 コカトリスが欧米風の鳴き声を発した瞬間、そのトサカになにやら激しく揺れ始めた!

 それに、あごの下のトサカと同じような材質? で出来た物もプルプルと震えている!


 なんかやばい気がするぞ?!


「美剣! 気をつけろ! なんかやばいぞ!」


「に”ゃー!」


 本能的に危険を察したのか、美剣が軽トラの荷台に戻ってくる!


「クックドウー!」


 その刹那、コカトリスの嘴から白い靄のような霧が広がりだす!



 すると、


 周囲の草や灌木がたちまちパキパキと音を立てて固まり始めた!


「石化攻撃だ!」



 ここにきて特殊効果の状態異常攻撃か!


 油断していた。


 ここまでヌルい敵が多かったのもあったが、魔物の危険性というものを失念していたようだ。


 ここはダンジョン。


 日々、尊い命が失われていく過酷な戦場だったのだ。




「コカーッツ!」


 周囲を石化効果のある霧で囲み、コカトリスが突進してくる。


 幸い、軽トラの結界の効果でオレ達にも軽トラにも悪影響は出ていないが、外に出て迎撃できない以上、このままではこちらから攻撃する手段がない。


 いや、軽トラで轢いちゃうか?



 んー、でもなー。


 なんかそれもあっけないっていうか、それ以降の応用が利かなくなるというか。


 そもそも軽トラで倒しても経験値もドロップアイテムも手に入らないしな。


 なんかいい手はないものか。



 よし、試してみるか。


 軽トラのギアをローに入れ、アクセルを全開にしてハンドルを目いっぱい切る!


 後輪がスリップして前輪を軸に軽トラの車体がUターンする!


 そこでギヤをニュートラルに戻し、サイドブレーキをかけ、さらにアクセルをふかす!


 この異質化した軽トラが特別仕様で、運転者の意識を反映してくれる機能があるとすれば。


 オレの思惑を汲んで、やってくれるはず!



 すると、後部のマフラーから怒涛の勢いで排気ガスが噴出する!


 コカトリスが周囲にまき散らした石化のガスが、軽トラの排気ガスで散らされた!


「よっし! いまだ美剣!」


「にゃー!」


 

 首ちょんぱ。


 見事、美剣はコカトリスを瞬殺した。


 キメラであるコカトリスの首ってどっちのだとかどこからどこまでだという議論はこの際置いておく。



「よし、この排気ガスで石化ガスを散らす戦法は使えそうだな。」


「先輩! すごいです! すばらしいアイディアですよ! もちろん美剣ちゃんもすごいです!」


「にゃー」



 おっと、マナミサンからお褒めの言葉をもらったぞ。


 実はこの排気ガスアタックを思いついたのにはヒントがあったのだ。


 オレが子供のころ遊んでいた、今となってはレトロなテレビゲームで。


 F1カーでのラリーを行い、敵につかまると残機が減るというゲームで、そこでは敵に囲まれたときに排気ガスを出して敵をクラッシュさせるという回数限定の技があったことを思い出したのだ。


「名付けて、『ラリーX・YZ』攻撃!」


「先輩? その名前は大丈夫なんですか?」


「微妙に変えてある。大丈夫なはずだ」


「にゃー?」



 よーし、この調子でトリニクゲットだぜ!



 


 




 










 

 

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