第177話 ショッピングもーる。
無事に魔石等の売却や、熊岱市ダンジョンの購入、およびその周辺一帯の土地建物を入手した後。
せっかくだからと晴田県内最大と目される複合ショッピングモールに足を延ばしてみた。
軽トラから500mという距離制限のある
人型のままこのような大きな商業施設に来るのが初めての美剣はとても楽しそうにはしゃぎ、4足歩行で駐車場内を走り回ったほどだ。
何人かにはその様子を見られてしまったかもしれないが、知らないふりだ。
まずは腹ごしらえという事でレストラン街に行き、初めて晴田県に進出した某全国チェーンのお安いイタリア料理のレストランに入ることにした。
なあ、知ってるか?
晴田県ってのはな、全国チェーンのお店がオープンするとテレビの県内ニュースになるんだぜ?
以前に夕方のニュースのそのコーナーを見ていた美剣が「ここだにゃ!」と言ってその店舗に突撃したのだ。
どうも、テレビで見たときのピザがとても旨そうに見えたらしい。
せっかくお金が有るんだから、もっとお高いところに入ってもいいとは言ったのだが、美剣たってのお望みなのだから仕方がない。
ということで、その店に入りピザやらパスタやらハンバーグやらデザートやらを注文する。よく食べるね君たち。
なぜかタバスコにご執心だった美剣がピザ1枚にひと瓶使ってしまい、その予想外の辛さに店内に切なげな叫び声が響いたり、意外と外食経験の少ないマナミサンが口の周りを
その後は女性二人(猫)で服でも見て、男のオレは暇を持て余すものかと思いきや、かつて制服と剣道道着以外の私服を持っていなかった女性と全裸がデフォだった猫は、ものの見事に10分もせずに数枚の衣類を買って満足している様子。
君たち? お買い物に時間かけないのはいいんだけど、もうちょっとくらいはゆっくり色々見て回ってもいいんだよ?
そして、賑やかな音と光に誘われゲームコーナーへ。
野生の勘でも働いたのか、UFOキャッチャーでお菓子を取りまくった美剣は、ベビーサラミの入った筐体を空にするまでゲットしてしまったり、武道を極めているマナミサンが驚異のリズム感覚を発揮して音ゲーを制覇していたりと平日にも関わらず注目を浴びてしまったが、知らないふりをしておこう。
そんなこんなで楽しい時間を過ごし、自宅に帰ってきたのは午後9時近くになってしまった。
陽介君たちはすでに帰った後らしく、ダンジョンのある車庫にはしっかり施錠がされていた。車庫のスペアキーを渡しておいて正解だったな。
デパ地下で買ってきた総菜を晩酌のつまみ兼夕食にしてひと心地付け、一日の疲れもありその日は早めにぐっすりと寝た。
美剣の満足そうな
◇ ◇ ◇ ◇
――翌日。
「さて、鹿爪市のストーンダンジョン攻略まであと6日ほどあるんだが、その間何をするべきかな」
「犬どもを狩るのにゃ! 豚どももにゃ!」
「ええ、剣の筋にまだ揺らぎが出てしまいます。きっちり仕上げませんと。」
脳筋かな?
「えーっと、ダンジョン潜るってことでいいのかな?」
「はい。できれば3階より下に。もっと手ごわい敵を求めに行きましょう。」
マナミサンが殺戮姫モードに入っておられるな。
そういえば、今度の攻略は自衛隊の部隊と合同だ。
以前ホームページで見かけたマナミサンのライバルはそこにはいないだろうが、それでも同じ自衛隊という事でなにか思うところはあるのだろうな。
「3階より下に犬野郎は出ないかもしれないが、それでもいいのか、美剣。」
「はいにゃ! 犬野郎はいつでも殺れるのにゃ。あそこにはひつじさんがいるから、また会えるのが楽しみなのにゃ!」
そうか、美剣は3階層のひつじさんとお話していたっけな。
なぜ猫語とひつじ語で会話が成り立つのかはわからないが、仲良くなったのだろう。多分。
たしかに、我が家の車庫ダンジョンが『成長』してからは一度3階層にちょこっと立ち寄っただけでろくに探索らしきものもしていなかったからな。
あの畑のお野菜も気になるところだ。
お肉も野菜も獲れるダンジョンっていいよね!
それにもしかしたら、ストーンダンジョンの攻略に役立つものでも手に入るかもしれないし。
これと言って反対する理由はないな。
だが、急いては事を仕損じる。
3階層よりも下は未到達の地だ。
どんなトラブルに見舞われるかもわからない。
「よし、この前みたいにテレポーターで飛ばされてもいいようにしっかり準備するぞ! ついでに来週のストーンダンジョンの分も準備してしまおう。よし、午前中はお買い物だ!」
「「おー(にゃー)」」
こんな展開になるんなら昨日のショッピングモールで買って来ればよかったなと思いつつも、それよりもお安い近場のスーパーで缶詰やらカップ麺とか、ホームセンターでキャンプ用品やら、百円ショップで美剣の投擲用のナイフとフォークやらを大量に買い込んでその日の午前中は終了した。
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