第172話 オークの定番。
「うーん、結局こうするのが一番か」
陽介君たちのパーティー、弓使い3人という偏った構成のパーティーの上手い戦闘運びを模索するべく合同でパーティーを組んでみたが、結局弓が3人では一か所に敵のタゲを留め置くことが出来ずに乱戦となってしまい、うまい方法が見つけられずにいた。
陽介君たちには熊岱市のダンジョン管理人を任せたいと思っているので、なるべく早く実力を身に着けてもらいたいところなのだ。
求めたのは最大効率。つまり、パワーレベリングだ。
「にゃー、ご主人は脳筋てやつなのかにゃ?」
「オレにも自覚はある」
ということで、今日のオレたちの目的地でもある地下2階のボス君のお部屋に陽介君たちと共にやってきた。
まあ、ここのボスと戦えるのも美夏ちゃんが宝箱を空けて『大きなトリュフ』をゲットしてくれたおかげだからな。陽介君たちのパワーレベリングをするには恩返しの意味も込めてちょうどいいだろう。
「よーし、一緒のパーティーならオレ達が全部倒しても陽介君たちに経験値は入るし、実はとある秘密があってレベルアップの速度が爆上りするはずだ」
「はあ……」
「まずはオレたちが倒してみるから、陽介君たちは最初は見学して。そのあと、せっかくだから前衛のいるフォーメーションでの攻撃に慣れて行くところから始めて行こうか」
「「「はい!」」」
「先輩が頼れる先輩冒険者みたいで素敵です」
「ご主人かっこいいのにゃ」
「ふふふ……もうポンコツとは言わせないぜ!」
オレは『大きなトリュフ』を手に持って高く掲げた!
――なにものかにであった!――
ボスの大オークと、取り巻きのオーク共が多数現れた。
「『
「『
「『
大オークたちは一瞬のうちに光の塵となって霧散していく。
「「「ほえー」」」
あまりに速い殲滅速度に陽介君たちが呆けてしまった。
「おっと、宝箱ドロップだ!
「これにゃら……大丈夫そうにゃ。美剣に任せるにゃよ」
「あれ? なんか変じゃありませんか?」
「どうした? 真奈美?」
「ボスさんって、宝箱落としましたっけ?」
言われてみれば。
たしかに、以前金策&レベリングで1階層の灰色大狼やここの大オークさんを相当数虐殺したのだが、どちらも最初の『カギ』以降は大きな魔石しかドロップしていなかったはずだ。
「超レアドロップってやつなのでしょうか?」
「にゃー、でも、前は美剣が倒しても宝箱は出てこなかったにゃよ?」
「うーむ、謎だ。あとで検証だがまあ、この宝箱開けてみるか」
「任せるのにゃ」
美剣が宝箱にとりつきに行く。
「何が出るんでしょうね」
「……なんかとても嫌な予感がするんだが」
「開いたにゃよ。これは何かにゃ? 丸くてぶよぶよしてるにゃ。しかも二つ。」
「やっぱりか……。」
「武田さん? 何が出たんですか?」
オレは陽介君を手招きしてみんなから少し離れ、男同士の話をする。
「……多分、オークの睾丸だ。」
「こ、睾丸……」
「ああ、詳しくは探索者センターで鑑定しなきゃならないが、オークのボスからドロップされるものと言えばこれが定番だ。」
「何に使うんですか?」
「それは……アレだ。男性自身のぱわーあっぷ? の薬が出来る」
「スポーツ新聞の広告欄に乗っているようなアレの元ってことですか……」
「ああ。ところで陽介君、コレ欲しい?」
「間に合ってます」
「なら売るね。ちょうど2個ずつドロップするみたいだから、半分こしてお互いで売りに行こう」
「いや、そこまで甘える訳には……」
「いいんだ。陽介君。もしオレたちがこのドロップ品を量産できると知られたらどうなると思う? おそらくは製薬会社やら怪しい宗教などから注文が殺到するはずだ。だから、入手先が複数あるという情報を流すためにもこれは必要なことなんだ。共犯という事で受け入れてくれ。」
「……そういう事なら。ありがたく受け取らせていただきます。」
よし、話はついた。
「……先輩? 何の話をしていたんですか?」
「いや、なんでもない」
「オークの睾丸がどうかしたんすかー?」
美夏ちゃん?!
「……オークのタマタマは精力剤の材料ですわよね?」
御園さんまで?!
「みんな知ってるにゃよ?」
「「……」」
オレと陽介君は顔を見合わせ、何も言わずに戦闘態勢に入り次のオークをポップさせた……。
「よし、次から美剣と真奈美はスキルは使わず、1体1体倒してくれ。タゲはオレがとるから、陽介君たちはフレンドリーファイヤーにならないような位置取りやタイミングを練習してくれ」
「わかりました」
「もし当てちゃったらごめんっすー」
大丈夫だ。なんたってオレは『
その思考がフラグになったのかはわからないが、オレは結構な数の矢を背中に受けることになってしまった……
まあ、レベル差あるし、『君主』だからほぼノーダメージだし、陽介君たちも最後にはオレに当てなくなるまで上達したからいいことにしよう。うん。
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