第171話 タゲ取り問題。
マナミサンのうっかり発言でオレたちの関係性がばれてしまった。
まあ、すでになんとなく察していたとは思われるが。
だが、『なんとなく』と『確実』にでは話が違う。
うーむ、これから陽介君たちには、オレは二股ゲス野郎という認識をもたれてしまうんだろうな。
「い……いや、必ずしもその二つの条件だけとはかぎらないじゃないですか! だって、それだったら自衛隊の攻略部隊とか、その辺の野良パーティーの説明がつきませんよ!」
おお、陽介君が顔を赤くしてこの話題の矛先を変えるべくフォローしてくれている。
あえて肉体関係とか血縁関係とか言わず二つの条件と言い換えてくれるあたり、彼のコミュニケーション能力はとても高いと推測される。
でも、たしかに陽介君の言うとおりだ。いくらダンジョン内でいたすと絆がつながって戦闘に有利になるとはいえ、すべてのパーティーがそんな爛れた関係性であるはずがない。
「にゃ? ご主人たちは何を悩んでいるのにゃ? 『この6人でパーティーです!』って、みんなで思うだけでいんじゃないかにゃ?」
「美剣? どうしてそう思うんだ?」
「だって、そういうものだって美剣は知っているからにゃよ?」
なんだと?
これは、動物の本能のなせる業なのか? それとも異質化の影響を強く受けたから故の知識なのか?
いずれにせよ、パーティーの組み方について、オレたちは猫から教えてもらったという事か……。
「じゃあ、いまからこの6人でパーティーという事で。みんなそう意識してくれ」
「了解です」
「わかったにゃ」
「わかりました」
「あーい」
「はい」
「……よし、これでオレたちはパーティーになったはずだ。まずはひと当てしてみよう」
オレたちは隊列を組んで玄室の扉を開ける。
先頭は盾持ちのオレ。左右に遊撃のマナミサンと美剣。その後ろに後衛弓3人という布陣だ。ちなみに軽トラは玄室入り口付近の通路にしっかり停車してある。
「『
まずはオレのスキルを発動。
玄室内にいるコボルド6匹、スライム4匹すべてのタゲをオレに寄せることに成功。
通常であれば、ここでマナミサンの『
そこに、後衛の3人から弓矢の攻撃が入り、コボルド3匹が一撃死する。
ここまでは、混合パーティーを組む前の陽介君たちと同じ展開だ。
残りはコボルド3、スライム4。
ここからのオレの動きをぜひ参考にしてもらいたい!
弓3人が1killずつしたが、いまだ全魔物のタゲはオレのまま。
通常であればこのまま盾で魔物の攻撃を引き付ける所だが。
オレは全速力で斜め右前方、魔物サイドから見て左側に走っていく!
オレにタゲを向けたままの魔物たちは方向転換してオレを追いはじめ、オレとの相対距離は詰まっていくも、わずかに魔物が側面を曝け出す瞬間が発生する。
そこに、追撃の弓3射。
これで、残りのコボルドは全滅。
あとはスライム4匹を残すのみ。
だが、ここでスライムたちの動きに変化が生じる。
陽介君たちが、一人2killしたことによりタゲが移り、スライムたちは陽介君たちに向かっていく。
ここで、オレはもう一度『
それにより、殴られたスライムは力尽き光の霧となり、残り3匹のタゲがまたオレに向く。
そっから先はもはや消化試合。
飛んできた弓矢3本が一匹ずつ仕留めて戦闘終了である。
「……と、こんな感じでどうだろうか。肝心なのは、敵のタゲをコントロールするところかな? ヘイト管理ってやつだよ。」
「はい! すごい戦いやすかったです! 今みたいなのを自分たち3人でもできるようになればいいってことですよね!」
「ああ、ただ、挑発系のスキルがないと工夫が必要だとはおもうけどな。あ、そういえば、パーティーの件はどうなったかな?」
「多分だいじょうぶにゃ! ケイケンチ? ってやつが流れ込んできた感覚があったにゃ!」
「そうですね。わたしも美剣ちゃんも1匹も倒してませんけど、経験値が入った感覚があるというのは、この6人がパーティーとして成立しているという事ですね」
「よし、そっちは大丈夫だな。じゃあ、今度はオレたちはフォローに回るから、陽介君たちで工夫してやってみてくれ」
「はい」
ナイン・ガーデンの3人は10分ほどミーティングをして方向性を決め、次の玄室に臨む。
試行錯誤の一環として、『斥候』の美夏ちゃんがワントップ。最初に美夏ちゃんだけが敵に矢を射かけ、敵のヘイトを一人に集めた。
そして、美夏ちゃんが速射で2射目を放った時には敵がすぐそばまで迫ってきており、その後は身の軽さを生かして『避けタンク』に。
ちなみにそれに合わせて弓も軽い短弓に持ち替えている。
着想は良いと思えたのだが、陽介君と御園さんが敵を2killずつするとタゲが分散し、そのあと美夏ちゃんがタゲを奪い返すことが出来ずに結局乱戦となってしまう。
うーむ、どうしたものか。
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