第173話 ナイン・ガーデンのスキル。

「あ、レベル上がりました! 武田さん!」


「あーしもっす。随分早いっすね」


「この早さは異常です。」



 陽介君たちのレベルが上がったようだ。


 たしか先日Lv3になったと言ってたから、これでLv4になったわけか。



「どうしてこんなに早いんですか? この魔物、大オークよっぽど経験値いいんですかね?」


「いや、秘密はこの軽トラにある。」


「意味不明っす」



「この軽トラ、たぶん異質化の影響で、持ち主であるオレたちのパーティーは経験値増大の効果があるらしいんだ。何倍になるかまではわからないけどな」



「陽介さんたちも、わたしたちと同じパーティーになったことでその恩恵が適用されたという事ですね。」


「そうなんですね。それはとっても素晴らしいことですわ」



 おお、マナミサンと御園さんが会話している。段々仲良くなってきたのかな。



「ってことはー、とんでもないパワレベってことっすね」


 美夏ちゃん、そういう事だ。



「で、そろそろ有用なスキルでも生えてくるころだと思うんだけどどうかな?」


「あ、そうですそうです。まだはっきりしませんけど、なんか能力が身についたって感覚がありますね。」


「あーしもっす。」


「わたくしはたぶん魔法ですね。」



 よしよし、ここまでは思う通りに順調だ。


 さて、陽介君たちはどんなスキルが手にはいったのかな?



◇ ◇ ◇ ◇




 さっそくスキル検証のための戦闘だ。


 敵は大オーク×1、オーク×8の編成。



「『挑発プロヴォケーション』!」


 まずはオレが全体のタゲを取る。


 そして、陽介君たちには安全なところから思い思いにスキルを試してもらおう。




「『誘引弓インヴァイトボウ』!」



 陽介君が初撃を放つ。


 攻撃を受けたオークのタゲが陽介君に向かった!


 そうか、たしか陽介君は戦士だったはずだから、弓持ちでも挑発系のスキルが生えてきたんだな。それに、多分タゲ取りのことを意識していたこともあるだろうな。


 どうもこのダンジョン内でのスキルって、職業うんぬんよりもその時強く意識していた感じのものが身につく傾向にあると思う。



 そして陽介君はタゲを取ったオークにもう一射当ててとどめを刺す。


 Lvが上がったことで攻撃速度も上がっているようだ。



「『くらまし』!」

 


 続いて美夏ちゃんがスキル発動。


 斥候、盗賊ならではの隠遁スキルの様だ。



 その様子を見ていたが、このスキル、けっこうぶっ壊れスキルの様だ。


 なぜなら、通常隠遁系のスキルは一度攻撃するなりのアクションをした後は敵に見つかってしまうものなのだが、これはスキルの名の通り『隠れる』のではなく『晦まし』ており、相手に攻撃しようが何をしようが発動中は敵は居場所を察知できないようなのだ。


 そのため、何度も何度も敵に見つからないように矢を放ち放題だ。


 見えない相手から矢を射られたオークは、ヘイトを相手に向けようとするもその相手を見つけられずに戸惑い、行動の空白時間が生じている。


で、その間に合計3射して1体のオークを倒し、結局そのまま2体を倒し切ってしまう。


 まあ、ぶっ壊れの分効果時間はそれほど長くなく、再使用までのクールタイムも長いようなんだが。


 

 それでも、陽介君の相手のヘイトを高めるスキルと併せて使えば敵のタゲをコントロールすることが可能なのではと思われる。



「『守りの加護プロテクト』!」


 そして御園さんは僧侶のオーソドックスな味方全体防御バフだな。


 『治癒ヒール』と合わせて最低でも二つは僧侶系の魔法を覚えたという事か。


 これで陽介君戦士職の防御力が上がれば、ヘイトを取って多少攻撃を受けても対応できることが増えるだろう。





 結局この日はこのままレベル上げを行って、陽介君たちは全員がLv6にまで上げることが出来た。


 残念ながら新たなスキルは生えてこなかったが、それでもナイン・ガーデンの3人だけでもオーク相手ならば複数を相手にしても戦線を維持することが出来るようになったのは大きな進歩だと思う。



 で、その戦いの結果、美剣が仕留めなくても一定割合で大オークからの宝箱がドロップし、ぶよぶよした丸いが6回ほど、合計12タマを手に入れてしまったのだった。


 


◇ ◇ ◇ ◇



 その後、自分達だけで1階層を攻略しに行くという陽介君たちと別れ、2階ボス大オークの周回を続け、次いで1階ボス灰色大狼の周回も行った。



 結果、ボスからの宝箱ドロップについては美剣が倒すとほぼ100%ドロップすることが判明。


 ダンジョンの拡張後にも灰色大狼や大オークは倒していたはずなのだが、なぜに突然宝箱を新たにドロップするようになったのかは不明だ。

 

 中身はと言えば、大オークの方はほとんどがタマタマだったが、まれに高級と思われるお肉が出たり、あとはボス呼出用のトリュフとはまた違った食用トリュフが宝箱に入っている時もあった。


 灰色大狼の方はといえば、それ単体で襟巻になる単体のしっぽだったり、武器とか工芸品に加工できそうな爪とか牙とか。牙なんかは象牙のように高級麻雀牌とかにもできるかもしれない。あとはマダムが好みそうなさらに1ランク高級な毛皮とかだな。



 通常ドロップの大き目な魔石と合わせて結構な売却益が期待できそうである。



 他には共通レアドロップのポーション類がときたま落ちたくらいかな。これは売らずにとっておく。




 あとは、オレたちのレベルが1づつ上がって美剣がLv13、オレと真奈美がLv11になった。


 美剣はとうとうマスタークラスだ!

 


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