第166話 熊岱市ダンジョン④
隊長ズに聞いたところによると、『暗視』スキルは射撃等の遠距離攻撃に特化した者が暗闇の中での戦闘を繰り返すと、レベルアップの恩恵等で手に入ることがあるらしい。
スキルはほとんどの場合、ダンジョン内で手に入る。マナミサンみたいに地上で手に入ることもあるが、そのスキルの素養を得るにはやはりダンジョン内で鍛錬を積むことが必要だろう。
で、暗闇で戦闘をくりかえすとなれば、ダンジョン内の暗闇と言えばダークゾーン。
ということは、『暗視』スキルを持っている人ってのはこんな真っ暗なところで射撃武器で戦って、レベルを上げているということか!
レベルを上げるという事は、戦闘に勝利しているという事であり、つまりはこの暗闇で敵に射撃を当てていることに他ならない。
その人たちは軽トラのヘッドライトもなしに、どうしてそんなことが出来たのか……
「……普通に、たいまつでいいんじゃないですか?」
「……はっ!」
そうか、たしかにダンジョン内で火は使えるんだから、たいまつは有効だ。
ああ、某線画ダンジョンのゲームでは明かりは魔法しかないこととか、軽トラのライトのことに固執するあまり、単純なことを見落としていた!
普通に、国民的RPGドラク〇のことを思い出せば解決できたじゃないか!
陽介君たちだって、あの時はダークゾーンがあるなんて知らなかったからたいまつなんて準備していなかったのであって、心と時間に余裕さえあれば引き返してたいまつを準備したはずではないか。
「にゃー、ご主人。また考えすぎたにゃね」
「灯台下暗しとは、言いえて妙ですね」
くっ……! オレのばか!
と、いうことで、さっきドロップしたコボルドのこん棒にマナミサンのファイヤーで火をつけてみた。
「うん。薄暗いけど見えるな。」
「篝火みたいにこのこん棒を高い所にたくさん設置しておけば、『暗視』スキルを覚えられるスポットとして探索者に人気が出るかもですよ!」
たしかに、高い所に複数設置すれば飛んでるコウモリモドキを撃ち落とすのはそれほど難しい事ではなさそうだ。
「なにか射撃か投擲の武器なかったっけ?」
「割り箸投げるかニャ?」
いや、割り箸投擲は美剣じゃないとまっすぐ飛ぶ気がしないし敵に刺さるとも思えない。オレにはフォークだって無理だ。
「これならいいんじゃないですか?」
マナミサンが取り出したのは、我が家のダンジョンの大カエルがドロップした金鞠のラグビーボールバージョン。
よし、ハイパントだ!
オレが蹴ったラグビーボールは、昔の5人組色別戦隊の赤の人のように、見事敵の中で爆発し、多くのコウモリモドキを魔石へと変えた。
足で蹴っても投擲になるのかは微妙だが遠距離攻撃には間違いないだろう。
これをレベルアップまで繰り返せば、『暗視』スキルが手に入るかもしれない!
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