第165話 熊岱市ダンジョン③

「きゃー、くらくてこわいわー(棒)」


 3階層のダークゾーンに入った瞬間、マナミサンが何か言いながらオレの左腕に抱きついてきた。何やってんの?


「なんて、こんな感じでお化け屋敷とかになりませんかね?」


「いや、落とし穴があって魔物が出るお化け屋敷なんて命の危険があるからな?!」


 マナミサンはこのダンジョンをテーマパークかなにかにするつもりなのだろうか? 

 というか、すっかりこのダンジョンを買う気だな。



 しかし、本当に真っ暗だな。光源が全くない。


 この階層に入る前に片目をつむって暗さに慣れさせようとしたのだが、そんな事前準備すらも無効化される暗さだ。


 まあ、それでも壁に手を付けばなんとなくの把握はできるが、陽介君たちは良くこの状態で先に進もうと思ったものだ。それだけあの強欲社長のプレッシャーが強かったのだろうけど。



「あ、美剣ちゃんがまだ人型ってことは、スマホの電源入りますね。これで明かりは確保できますけど……軽トラさんと一緒に来るか地上に置いておかなきゃ無理ですしね。」


 そうなのだ。


 オレ達はこのダークゾーンを難なく攻略できることはできるのだが、それは軽トラの能力ありきのことなのである。


 ヘッドライトやカーナビはもちろんの事、美剣のネコ特有の暗視能力だって、軽トラがそばにあって美剣が人化していられるから魔物を倒せるのであって、軽トラ無しで猫の姿のままではさすがに魔物とは戦えないだろう。

 

 今、スマホの電源が入るのだって軽トラと「500m以内」という制約の範囲内にいるからであるし。






 オレ達がこのダンジョンを買ったとして、マナミサンは一般開放、観光地化して収益化することに前向きだ。

 だが、所有者となれば定期的な間引きによる近隣住民の安全確保も必要だし、一般に開放するとなれば探索者の安全確保のための管理人もおかなければいけないだろう。

 オレ達が管理人になればいいのだろうが、実際問題自宅にダンジョンを持つ身となれば手が足りない。


 で、ここのダンジョンに潜ったことのある陽介君たちにここの管理をお願いすればいいかなとも一瞬頭をよぎったのだが、このダークゾーンがある限りそれも難しい。

 陽介君たちは文字通りここで命の危険に遭ったのだから。


「んー、陽介君たちに『暗視』のスキルが生えてくれれば何とかなりそうなんだけどな。レベルの不足はウチのダンジョンで灰色狼倒してあげてもらうとしても。」


「そうですね。何か、簡単に暗視のスキルを得られる方法でもあればいいんでしょうけど」



 そういえば、暗視スキルの取得方法については以前隊長ズに聞いたことがあるな。





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