第167話 熊岱市ダンジョン⑤

 暗視スキルを取得できる可能性を見出したオレ達は、レベルが上がるまでコウモリモドキたちを狩り続け……はしなかった。


 この前レベルが上がったばかりだし、なによりコウモリモドキを何百匹倒せばレベルが上がるのかわからない。おそらく相当数倒すことが必要だろう。


 どれほど時間が必要なのかわからないので、今日はここで切り上げることにした。


「陽介君たちのレベルが上がってきたら、ここで『暗視』スキルが取れるか試してもらいたいな」


「はい。篝火みたいにたいまつを固定する金具とかも買わないとですね。ホームセンターによさげなのがあればいいんですけど」




 って、ちょっと待てーーー!


 なんか、ダンジョン買い取る方向で話が進んでないか?





「いや、お金とか、陽介君たちの同意とか、いろいろ詰める事あるからね。」


「あら、お金のことなら心配いりませんよ? 私と美剣みけちゃんのお金を足せば楽勝で買えますから。つまり、このダンジョンはパーティーで買うわけではなくて、私と美剣ちゃんの持ち物になるわけです。それなら、先輩も文句は言えないでしょ?」


「いや、文句というか、そんな、個人(猫)の金を使わせるわけには……」


「私のお金ですよね? じゃあ、私が使い道を決めても問題ないじゃないですか?」


「いや、そんな言葉遊びじゃなくてだな……」


「そもそも、このダンジョンを買うのは将来を見越した不労所得のためなんですから。妻が老後の生活に備えて自分のへそくりで不動産を買っておくだけですよ?」


 くっ、そこまで言われたら反対できないじゃないか。


「わかったよ。買おう。ただし、オレも金を出す。というか、ここのダンジョンを買うために金を稼ごう。名義は真奈美でいいし、経営も任せる。それでいこうか」


「はいっ! ありがとうございます! さすが先輩! 大好きです!」


「にゃー、美剣がネコ社長になって、お客をたくさん集めるのにゃー!」


 え? 社長? 法人化するのか? まあ、確かに従業員301人以上じゃないとダンジョン購入条件は個人売買と変わらないし、いいのかな?


 じゃあ、有限会社かな? いや、たしかもう有限会社は新規に設立できないはずだ。ということは、合同会社という事になるのだろうか。詳しい所は帰ってからネットで調べてみないとな。


「設立は私に任せておいてくださいね! 代表社員(社長的な人)は美剣ちゃんにしたいですね!」


した美剣を社長にして法させるなんていいえて妙なのニャ」


「それ、漢字で書かないと意味わかんないからな?」


 というか、美剣は戸籍がないから社長は無理だと思うのだが。それに、目立つことは避けるべきだしな。まあ、無難にオレかマナミサンだろうな。





 ということで、なにやら探索者のほかに経営者にもなってしまうことになってしまったのである。


 

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