第160話 ダンジョン資産化
「先輩! 買いましょう!」
おおう、マナミサンが食い気味だ。
どうも、さっきのセンター長さんの「将来の資産としての不動産」という文言を聞いてから目が輝きだしたようだ。
「わたしたちも、いつまでも若くないんです! 年を重ねて、探索が出来なくなったら探索者なんてつぶしが効かなくて再就職なんて無理そうです! だから、わたしたちがおじいちゃん、おばあちゃんになってもお金が入ってくるように不動産収入という不労所得を手に入れておきましょう!」
マナミサンの長文セリフが炸裂してきたが、確かに言われてみればそうかもな。まあ、19歳の女子の吐く言葉ではないような気がするが。
今のオレは32歳。もうすぐ33になる。レベルアップの恩恵もあって、まだ体は動いているが、40歳や50歳になっても今のように魔物と戦えるかはその時になってみないとわからない。
老後に至るまで8万枚の金貨……じゃなくて、億のカネを貯めるのもなんとかなりそうな気もするが、途中で誰かが怪我とかしてしまって戦えなくなってしまえば取らぬ狸の皮算用になってしまう。
それに、今回みたく900万越えの収入があっても、支出も結構あってすでに残金が心もとなくなっている状況だ。
これは……決断すべきかな。
「わかりました。前向きに検討させていただきます。ただ、県警からの間引き依頼も受けていますので、数回その依頼をこなしながら様子を見させて欲しいのですが」
「はい! お買い上げありがとうございます! 売却済みにしておきますね!」
いやいや、まだ買うとは言ってないぞ?
どうも、このセンター長さんの言動からして是が非でもオレ達にあのダンジョンを買わせたいらしいな。
まあ、この探索者支援センターの職員たちも特殊法人の従業員とはいえほぼ、みなし公務員と言っていいだろう。
給料が変わらないのならば、自分たちが管理するダンジョンの数とかは少ない方が仕事が減っていいのだろうな。
「いや、だから、その辺は先ほども言いました通り様子を見てからしっかりとしたお返事をさせていただきますので」
「チッ。わかりました。『売約済み?』にしておきます」
「人の話を聞いてくださいね?」
このセンター長さん、いま舌打ちしたよな? なんか地の性格が出てきたというか……。けっこうはっちゃけた人なんだろうか……。
「で、もし購入したとしたら、探索者センターさんがダンジョンの観光地化にサポートとかしてくれるんですよね?」
「ええ! それはもちろんですよ! たとえば、ダンジョンまんじゅうのご当地バージョンとか卸しますよ!」
それって、包装紙をそれっぽく変えただけのやつだよね……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます