第154話 『ナインガーデン』の職業

 2階層案内を始め、そこそこの時間が経過した。


 残すは3階層への階段やボス部屋くらいのものだ。


 そのボス部屋の一つ手前の玄室、未だ開けられていない宝箱がそこには鎮座している。


「へえ、まだ開けてない宝箱もあるんすね~」


「ああ、なにやら罠が厄介なんだよ。安全策ってやつだな」


 九嶋兄妹の妹ちゃん、美夏が宝箱に反応を示す。


 確かこの妹さん、高校を出て1年目とか言ってたな。という事はマナミサンと同い年か。


 同い年の同性が一つ所に居ればそれなりに仲良くなったりするかと思いきや、この二人は特に会話らしい会話もしていない。


 というか、この妹さん。最初のお礼以降、言葉を発したのは初めてではないだろうか。

 見たところ、人見知りというわけでもないように思うが、無口なのだろうか。まあ、あまり打ち解ける前からぺちゃくちゃしゃべられてもそれはそれでいかがなものかとも思うのでちょうどいいのかな。


 それに、陽介君の彼女さんである御園さんは一言もしゃべらないし。

 あれ?そういえば、御園さんの声をまだ聞いたことないかも。


 そんなことを考えていたとき、


「あの~、もしよかったら、その宝箱、開けるのチャレンジしてみていいっすか~? あーしもなんかお礼したいって言うか、お役に立ちたいって言うか~?」


 まあ、別に構わないが……開けられるのかな?


「ああ、美夏は弓持ちの『斥候スカウト』なんですよ。本当は『盗賊』だと思うんですけど、字面が嫌だって斥候を名乗っているんです。」


「そうだったんですね」


「ちなみに、僕はたぶん『戦士』で、御園は弓装備の『僧侶』かな? まあ、もうちょっとレベルがあがればなんかのスキルとか覚えられるのかもしれないけど、僕は魔法とか覚えられるイメージ湧かないし、御園も君主にしては攻撃力が上がらないですからね。命中率はいいんですけど……」


 そうなのか。というか職業とか普通に教えてもらっちゃったな。その辺は探索者によってはひたすらシークレットにする人もいるって聞いたけど。


「いや、命も助けてもらったし、なによりこれからもお世話になりますからね。秘密にしておくのは失礼だし、それに、逆に僕たちの事をもっと知ってもらいたいですから。」


 陽介君のその言葉に美夏さんと御園さんも頷いている。


 まあそうだな。下手に秘密を持つとやりにくくて仕方がないのは、軽トラや美剣の件で心にオレも沁みている。


 こっちだって、既に美剣の秘密は明かしているからな。


 そんなことを陽介君と話していると、



「あ、なんとかイケそうっすよ~」


 宝箱に取り付いていた美夏さんが声を上げた。


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