第146話 夕食はとんかつにゃ
オレ達は、羊たちの農業を呆然と見ているうちにそれなりの時間がたったことに気付き、地上へと戻ってきた。
入口の玄室に戻ると、いつの間にかそこにあったプチトマトのプランターが無くなっている。
やはり、先ほどの羊と
「これから米も野菜も食べ放題。その代わりにプチトマトってことでいいのかな?」
「たしかに、あのトマトはチカラがみなぎってきましたけど……。でも、さっきも思いましたけど、野菜食べ放題と比べるとどうなんでしょう。価値が釣り合わないと思います。」
「にゃー、あの甘露なトマトがないニャー! 美剣は、チュー〇の次にあのトマトがお気に入りだったのにゃー!」
「まあまあ、また植えておくから、実が成るまで我慢してくれ」
「それならいいのニャ」
そういえば、荷台にはさっきの3階層でもらってきたキャベツが積まれている。
あのキャベツもダンジョンで育ったという事は、プチトマト並みに何らかのチカラを秘めているのではなかろうか?
「ちょっと食べてみようか?」
「そうですね。どんな味がするんでしょう?」
「美剣はウサギじゃないのニャ。でも、食べるのニャ。」
そうして、荷台のキャベツの新鮮な葉をもぎとり一口かじる。
「……うん、うまい。うまいけど……」
「ですね、あのトマトのようにチカラがみなぎってくる感じではないですね」
「にゃー、そーすかしょうゆが欲しいのニャ。」
「うん、まあ仕方がない。こんなもんだと割り切るしかないだろうな」
「そうですね。毎日の食事の度にチカラがみなぎっていたら、それはそれで疲れそうですしね」
「きゃべつにはとんかつにゃね。今日の夕食はとんかつを所望するのニャ」
「はいはい、オーク肉のでいいですか?」
「頼むのニャ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
オレは夕食のとんかつを頬張りビールで流し込んでから、改めて今日の出来事を思い返してみた。
3階層で出会った羊たち。
羊たちは、人間の主人がいると言っていた。ということは、あのダンジョンにはすでに人が立ち入っているという事になる。
だが、1階層も2階層も、オレ達が初めて立ち入ったはずだ。
もし、オレ達以前に3階層に到達した人間がいるのなら、少なくとも、オレ達が開ける前に、1階層や2階層の次の階層に通じる部屋の扉の鍵は開かれていたはずではないのか?
どうにも、3階層だけ異様なのだ。それに、プチトマトが消えたことも気になる。
ダンジョンの『成長』がなにかに関連しているのか?
それとも、オレの知らないところで何かが起きているのか?
もしくはそれら全部が同時並行的に……
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