第145話 羊農場

 美剣みけの通訳? によると。


 どうやらこの羊さんは、この軽トラを見て自分の主人と勘違いしてあいさつ代わりの頭突きをかましたところ、別人と気づき慌てて恥ずかしくなってお詫びのキャベツをくれたのだとか。


 なぜ美剣が羊の言葉を理解できるのかは不明。美剣本猫本人も「なんでかわからないけどわかるのニャ」と言っている。うむ、よくわからん。


「なあ美剣? この羊さんに、『主人』というところと『畑』と『キャベツ』について詳しく訊いてくれ」


「わかったにゃ。にゃーにゃにゃあにゃ? にゃにゃあにゃあ?」


「メエメエヴェエエエエエエエ。メエメエ。」





 うーん、なんてシュールな光景だ。


 なあ、知ってるか? ネコミミ少女と羊は会話できるんだぜ……。



「わかったにゃ。羊さんによると、ここの畑や田んぼは、羊さんたちとその主人さんが一緒に作ったそうにゃ。その主人さんはにゃんだか遠い所に出かけていてしばらく帰ってきていにゃいけど、この『Dぐるーぷ』の羊さんたちが留守番して、畑の世話とかをしているという事にゃ。」


 あんな短い会話にそこまでの情報量が!



「え、えーと、その羊さんの主人さんって人間……なんですよね?」


「そうらしいにゃ」


「そ、その人の名前ってなんていうの訊いてみてくれ!」


「個人情報だからダメらしいのニャ」


 くっ……! 羊が個人情報保護法を律義に守るだと……!




 そんな会話をしていると、どこからともなく白と黒の羊が1匹づつ現れてこちらに近寄ってくる。

 新たに現れたこの2匹からも特に敵意は感じない。



「この羊さんたちは、『D白1』さんと『D黒1』さんだにゃ」


「は、はあ……」





「「ヴェエメエメエメエ」」



「わかったニャ」



「なんて言ってるんだ?」



「この畑や田んぼはまたこれから作付けをするから、作物は自由に持ってってくれという事にゃ。そのかわり、プチトマトのぷらんたあを欲しいと言ってるニャ。にゃんでも、これはトーカコーカン? とかいう決まりらしいのニャ」



「わかるようでわからんな」


「等価交換? 作物とプチトマトを交換という事でしょうか……?」


「それって等価なのかな?」


「わかりませんけど……でも、これでお野菜とかお米とかタダですよ?」



 すると、もう話は終わったとばかりに羊たちは踵を返して奥の畑の方に向かって行く。

 その向かう先の畑では、いつの間に現れたのか、黒と白の羊たちが畑の土を隆起させて耕し畝を作り、空中につむじ風で浮かせられたタネが次々と畝に開けられた穴に放り込まれていく。


「これが作付け……なんでしょうね……」


「あれは風の魔法と……土の魔法か? 魔法のオートメーション作付け……!」


「すごいのニャ」



 オレ達は、羊たちのやたらと手際? のいい農作業を呆然と眺めているのであった……。

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