第144話 ダンジョンの羊
「メ”ェェェェェェェェエエエエエエ!!」
どこから現れたのか、突然目の前に羊が現れた!
魔物か? たしか、羊の姿にそっくりな魔物、魔羊というのがいるとネット上で見たことがある。
魔羊は、軽トラを見るとこちらに向かって突進してきた!
軽トラから降りようとしていたオレは、無手だったこともあり慌てて運転席に舞い戻る。
この間合いでは回避は不可能だ。軽トラアタックで迎撃するにも、荷台から美剣とマナミサンが飛び降りて迎撃するのにもタイミングを逸している。
しかたない、こうなったら軽トラの『結界防御』で一旦受けて、相手の突進の威力を確認しよう。
そう思ったその時――、
ゴツン。
あれ?
なんと、魔羊は軽トラのそばまで来ると速度を落とし、まるでじゃれつくかのような感じで軽トラのフロント部分に頭の角を軽くぶつけてきた。
ゴツン。ゴツン。ゴツン。
魔羊の頭突きは数回続く。まるで、甘噛みならぬ甘頭突きだ。
数回頭突きを繰り返した魔羊が、運転席にいるオレの顔を見る。オレと目が合う。
すると、魔羊は「やべっ、間違っちゃった!」というような表情をして軽トラから距離を取る。
「なんだろう……この、表情豊かな羊は……」
「魔物なんでしょうけど、殺意とか、敵意とかは感じませんね」
「にゃー、わるい羊じゃないと思うのニャ」
魔羊は、気まずさと戸惑いが混ざったような表情でこちらを見ている。
見ると、さっきは驚いて気づけなかったのだが、首のところに、まるで日本の会社の社員証をぶら下げるような名札? のようなものがぶら下がっているではないか。
「なんか書いてあるな……読めるか?」
「日本語ではないですね……。というか、どこの国の言語でもないような……。」
「にゃー、美剣は読めるニャよ! 『D白46』って書いてあるニャ」
知らない言語を読める美剣にも驚いたが、知らない言語なのにアルファベットと漢字と数字が混ざっていることにも驚きを感じる。だが、なぜかこれには突っ込んではダメな様な気がするのが不思議だ。
すると、羊はなにか申し訳ないような表情を浮かべながら、畑にあるキャベツを浮かし――、あれは魔法か?
キャベツの根がかまいたちのような風にスパっと切り裂かれて土が落ち、キャベツ本体がつむじ風のような風に舞いあげられ、見事に軽トラの荷台にソフトランディングする。
そうして、合計10個ほどのキャベツが荷台に積まれた後、羊は
「ヴェエエ」
と一言鳴いた。
「にゃー、『間違ってごめんなさい。これはお詫びの代わりです。』って言っている気がするにゃ」
どこからツッコめばいいんだ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます