第143話 3階層
――地下3階層。
「「「うわー(にゃー)」」」
そこは、これまでの迷宮型の構造から一変して、一面の草原であった。
「広いのニャ」
美剣が言う通り、フィールドの端が見えない。まるで地平線だ。
地球という球体の上にある地面なら地平線が見えるのはわかるのだが、平面と思われるダンジョン内でも地平線があるという事には「ダンジョンだから」という理由でかたづけてしまうのが精神衛生上は一番いいのであろう。
本当に果てがないほど広いのかと軽トラカーナビを見てみると、確かに広いことは広いのだがきちんとフィールドの端はあるようだ。
「端っこがどうなってるのかも気になるところだが……」
「まずは目の前にあるこれですね」
「にゃー、畑があるのニャ」
草原の中に切り開かれた農地。広大なフロアに比べればほんの一部なのであろうが、それでも地上で言えば大規模な畑が広がっていた。
「あ、あれは田んぼですね。水は入ってないようですけど」
たしかに、畑の向こう側にある、あの構造は水田だ。
我が家にも親から受け継いだ田んぼがあるのでその構造は見慣れている。小さい頃は昼食のパンを目当てに田植えや稲刈りの手伝いによく行ったものだ。まあ、本人は手伝っていたつもりでも、今思えば逆に邪魔になって戦力にはなっていなかったのだろうが。
「それにしてもなぜ……ダンジョンの中に人工のものが……」
一見、畑や田んぼは自然のものと思ってしまいそうになるが、これはれっきとした、人の手が入った『人工物』である。決して、雨風などの自然の力でこのような様相の土地にはならない。
畑は黒々とした土の
そこに向かって軽トラを走らせる。
畑の中の緑色に近づくと、そこには3列にわたって整然とキャベツが飢えられていた。どれも大きく育っており、収穫しても大丈夫なくらいに育っている。
これは、誰かが植えたという事としか思えない。
どういうことだ?
ここは、オレの家の車庫にできたダンジョンのはずだ。
そして、つい先日、地震のような揺れと共に『成長』して増えたフロアのはず。
どうして、そこに人の手が入った風景が広がっているのだろうか?
ダンジョンという不思議のかたまりのなかで、整然とした
当然、この場で考えを巡らせていたところで正解等はわかるはずもない。
少しでも手掛かりを手に入れようと、目の前にあるキャベツを手に取ってみようかと、軽トラを降りようとしたその時。
目の前に、それは現れた――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます