第142話 受け入れ準備

 陽介君たちが我が家のダンジョンをホームにすることになった。


 懸念となるのは、やはり軽トラと美剣みけの秘密の事だが、まあ、国などにはすでに露見しているわけだし、守秘に関する誓約書も交わしてくれるというので大丈夫だろう。


 それに、既に陽介君たちを救出するときに軽トラと美剣のことは見られているのだ。まあ、陽介君たちはそれどころじゃなかったから、せいぜい軽トラの記憶くらいしか残ってはいないと思うのだが。


「にゃー、わたしはあの人たちの前で戦っても大丈夫なのかニャ?」


「ああ、最初は驚かれるかもしれないが、陽介君たちならきちんと秘密は守ってくれるだろう」


「そうですね」


 で、その陽介君たちと言えば、我が家のダンジョンをホームにするにあたり、ここ丸舘市内に住居を定めるべく賃貸住宅を探しに不動産を回ってくるという。


 実家は晴田市にあるらしいが、さすがに毎日通うのはきついのだろう。丸舘市に比べて晴田市から1時間も近い熊岱市のダンジョンでも、あの社長が経営するアパートを寮として住んでいたみたいだし。


「でも、九嶋さんたちが来るのなら、これまで通りに自由にダンジョンで育めなくなりますね」


「にゃー、美剣は家でも人型になれるにゃよ? あ、でもやっぱりダンジョンの方がいいのにゃ。」


 そうか、そのことを失念していたな。まあ、向こうもカップルがいるのだ。お互い時間や日にちを決めるなどすれば何とかなるだろう。


「でも、妹さんってその時どうしてるんでしょうね……。まさか、兄妹いっしょにとか!」


 おっと、マナミサン。それ以上はストップだ。


 他人の家庭の寝床事情に興味を持つのはやめておきなさい。






「とりあえず、契約書作っておくか。たしか専用サイトから様式ダウンロードできたよな?」


「あ、わたしが作っておきますね。えっと、入場権利が30万円、年間使用料が10万円で、取得物の権利は手数料なしの全渡しでいいですね?」


「ああ、それでいこう」


「あと、守秘の誓約書もですね。これは、知りえた事柄のすべてを対象という事で」


「よろしく頼む」



 こうして午前中は陽介君たちが訪れる準備を整えつつ、午後からダンジョンに向かう。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「やっぱりいないな」


「狼さんと同じように、何かのアイテムが必要なんでしょうね」


「にゃー、わたしが、この宝箱を開けられさえすれば大豚野郎なんて倒し放題なのににゃー」



 オレ達は2階層のボス部屋に来て、ボスがリポップしていないことを確認する。

 

 隣の部屋の宝箱に美剣が再度挑むも、自信がないという事で保留にさせた。


「もし1階層下にテレポートさせられても、ダンジョンが『成長』した今ならどうにかなるんじゃないですか?」


「そんな気もしないでもないが、まずは3階層の様子を見てからだな。どんなフロアなのか想像もつかない。」


「にゃー! あたらしい狩場にレッツゴーなのにゃ!」



 オレ達は、3階層へと続く階段を軽トラで降りて行った。

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