第141話 新規入場契約

「こんにちはー! 先日は、本当にありがとうございました!!!」


 陽介君が到着した。妹の美夏さん、彼女の堀北御園さんも陽介君のお礼の言葉に合わせて深々と頭を下げてくる。


「これは、少ないですが捜索の日当とお礼です。本当はもっとお包みしたかったのですが……いろいろとありまして……」


 陽介君はそう言って結構な厚みの『お礼』と書かれた熨斗袋のしぶくろを手渡して来る。


 日当か。たしか、ダンジョン捜索隊の場合の相場は一人1日5万円ほど。あの時の場合だと、美剣の存在は一般には明かしてないことになっているから、オレとマナミサンが1日間で計10万円もあれば十分なはずだ。


 なのにこの熨斗袋の厚み。なんとなくだが、50万円ほどは入っていそうだ。


「陽介君? こんなにはいらないよ? 相場の額でも十分すぎるくらいだし。それに、妹さんの入院やら、ホームのダンジョンがあんなことになったりして、色々と物入りなんじゃない? だから、本当に気持ちだけでもありがたいんだけど……」


 と、見栄や遠慮ではなく正直なところを言葉にする。かといって、もらったものを相手につき返すのも失礼になってしまうし、うーん、どうすればいいんだ。


「それで……、実は言いにくいんですが、今日はお礼のほかにも、お願いというか、ご相談もありまして……」


 陽介君をはじめ、3人そろって都合の悪そうな表情になる。何だろうと思ったが、陽介君たちの現状を鑑みると、一瞬でその言いたいことが理解できた。横に立っていたマナミサンもオレの脇腹を小突いてくる。ちょっと、マナミサン、力加減というものをだね……。


「わかりました。自由に潜ってくれて構いませんよ?」


「「「えっ……!」」」


「我が家のダンジョンを拠点にしたいという話ではないのですか? ならば、ご自由に入っていただいて構いませんよ。」


「は……はい! 実はそのことをお願いしたいと思っていました。例の件でホームのダンジョンが無くなるし、色々と物入りだし、正直困ってて……。でも、命を助けていただいたうえに、こんなずうずうしいお願いをするのも気が引けて……。とても言い出しにくかったんですけど、そう言っていただけるなら……。ありがとうございます!」


「ただし、ダンジョン内及び我が家のダンジョンに関することで見聞きしたことは決して他言無用です。この条件を飲んでいただけるのが条件になりますが」


「はい! もちろんです! 誓約書も書かせていただきます!」


「わかりました。では、先ほど頂いたお礼の中から捜索隊お礼の相場の分を除いた額で、入場権利と今年の年間パス分は頂いたという事にして、成果物は全て陽介君たちの自由ということでどうでしょう?」


「は……はい! ありがとうございます!!」


 こうして、我が家のダンジョンに初めて他のパーティーが出入りすることになったのであった。

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