第140話 お礼の電話
我が家のダンジョンが『成長』し、その調査が終わった。
調査に同行してきた隊長ズや、ダンジョン課の駐在さんからそれぞれ依頼というか、お願いのようなものをされ、結局全部引き受けることとなった。
「で、どうします? 受けた依頼の中で、私たちの都合だけで動けそうなのは熊岱市の件くらいですけど?」
うん、確かにそうだ。鹿爪市の方は自衛隊の部隊の作戦実行時に合わせなきゃいけないからもちろんとして、駐在さんの方だって予定のすり合わせくらいは必要だろう。
「そうだな……。まずは成長した我が家のダンジョンの様子を見るか。」
「そうですね。3階層への階段、降りて見たいです。」
「にゃー、わたしはあの宝箱をやっつけたいのにゃー」
そうだ、
1階の大狼でもそれなりの経験値は得られるが、2階の大オークならばもっと効率的にレベリングが出来るだろう。
といっても、あの宝箱の罠は結構厳しい。美剣の罠外しスキルを上げるためにはレベルアップすることが一番の近道だとは思うのだが、効率的なレベリングに必要なアイテムがその宝箱に入っているというもどかしさ。
「よし、3階の様子をちょこっと見て、あとは1階の大狼でレベリングしようか。それで金策もできるしな」
そうなのだ。ダンジョンが成長したのは望ましいのだが、そのせいで1年間のダンジョン所有税が40万円から210万円にまで跳ね上がってしまった。
手持ちの魔石等を売却すればどうにか払えるとは思うのだが、手持ち金が底をつくのは避けたい。
換金率の高い大狼の魔石を大量ゲットして、経験値&お金をゲットするのが現実的なところだろう。
「よし、じゃあダンジョンに行こうか……おっと、スマホに着信だ。誰かな?」
スマホの着信画面には、「九嶋陽介」の名前が表示されている。
「はい、もしもし」
『もしもし! 武田さん? 先日は本当にありがとうございました!』
「あ、いやいや。妹さんの容態は大丈夫かい?」
『はい! 美夏も無事退院しました! それで、お礼に伺いたいんですけど、武田さんは今日お家にいらっしゃいますか?』
んー、実はこれからダンジョンに行こうとはしていたんだが、来客となれば仕方がない。
「ええ、大丈夫ですよ。ですけど、そんなわざわざお越しいただかなくても……」
『いえ、ぜひ直接お会いしてお礼を述べさせてください! それでは、今からそちらに向かいますので。あ、詳しい住所をお伺いしてもよろしいですか?』
陽介君たちなら個人情報の悪用などはしないだろう。
オレは自宅の住所を教え、ダンジョン行きを中止して陽介君たちの到着を待つのであった。
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