第136話 ダンジョン再調査
「そうか……これがあったか」
自宅の車庫にできたダンジョンが成長し、軽トラが更なる【異質化】を遂げ、その影響にオレ達も巻き込まれた形で各個人に新たな能力が増えた。
これからも心躍るダンジョン探索は続けられるし、能力は増えるわでいいことづくめのように感じていたのだが。
『地下迷宮の広さ、質等の変化が認められた場合には、その権利者はそのことを知りえた日から遅滞なく、その旨を都道府県知事に報告しなければならない。』
『日本国土内における新たな地下迷宮の発現に伴う、その義務、権利、安全その他を包括的に定める法律(通称、ダンジョン法)』の中にこんな条文があるのである。
つまり、ダンジョンが成長したことを当局に報告しなければならないのである。
まあ、本来は異質化した軽トラも美剣のことも速やかに報告しなければいけなかったのだが。
その辺は、『軽トラ』も『美剣(猫)』もダンジョン発生前からの既存の所有動産であり、必ずしもダンジョンの一部またはそれに類するものとして定義するには微妙であることもあって、報告の遅滞に対するペナルティー等は課されなかった。
隊長ズの口添えのおかげもあるのだろうし、人命救助の功もあったからかもしれないが。
だが、今回のダンジョンの成長の件は法律の条文そのままドストライクであるので、さすがに酌量の余地は生まれないだろう。
オレは、スマホを手に取り電話を掛ける。
その番号は、「ダンジョンホットダイヤル」という名称で、最初にダンジョンが出来た時にもかけた番号だ。
この番号は、110番や119番と並んで市町村の広報誌などにも必ず載っており、年に一回、地域のごみ収集の予定日や決まり事の案内が配布される時期に同じくダンジョンに関する冊子も配布され、その冊子の表紙にもでかでかと印字されている。
氏名、住所を告げダンジョンが拡張したらしいと告げると、
「では、明日の午後に調査の者が向かいますので」
といった返答を持って通話を終える。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして翌日、
「先日はお世話になりました。」
現れたのは、丸舘署のダンジョン課を兼務しているというどこぞの駐在所の駐在さんと、
「「ひさしぶりだな、あんちゃん! いや、そうでもないか! HAHAHA!」」
まさかの隊長ズだった。
もちろん、県庁の調査担当官も同行している。というか、本命は調査担当官なのであり、隊長ズ達がそれに同行してきたというのが正しいのか。
「「あんちゃんとこの調査が行われるって聞いてな!! 上司に無理言って出張してきたんだ! あんちゃんたちにはもう一度会いたかったしな!」」
と、隊長ズの熱烈な? ご挨拶を受けた後には、
「自分も、武田さんとはもっと親しくなりたいと思っていたので、ちょうどよかったです」
と、駐在さん。
駐在さんの後ろには、変わらずパトカー仕様の軽トラと、その助手席にのるアニメ顔の女性署員が見えた。こちらに軽く頭を下げてくれる。
なにやら、波乱の予感がしてきたぞ?
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