第135話 隣接500m

「わーい、お出かけニャ」


 ダンジョンの成長を確認した翌日、オレ達は買物に向かうべく車に乗り込んだ。


 向かう先は、市内の100円ショップ各店だ。


 というのも、美剣みけの投擲スキルの弾丸として割り箸を使っていたのだが、もっと殺傷能力のあるものがいいんじゃないかという事で、100円ショップからフォークとナイフを買えるだけ買ってこようというわけだ。


「他になにか手裏剣みたいに投げられるものはないかな?」


編み棒リリアンなんてどうですか?」


「それだと、美剣にセーラー服着せなきゃいけないな」



 などと、益体もない会話を続けながら、車を発車させる。


 この車は、マナミサンの軽自動車。


 車内には、オレとマナミサン、そして、美剣みけがいる。



 そう、今日のお出かけにはもう一つの目的がある。


 以前、軽トラが地上に出られると判明した時、軽トラの近くに居れば美剣は人型のままでいられたが、半径5mくらいの範囲から外れると猫の姿に戻っていた。


 今回、新たにオレもマナミサンも、そして美剣も再び異質化と思われる能力の変化があった。


 それらの能力が、はたして軽トラの影響下にあるのか? それともオレたち自身に付与されたものなのかという検証だ。


 その検証の方法として、「軽トラのある場所からなるべく離れてみる」ことが今回のもう一つの目的だ。


 で、車を走らせたわけだが。


「あ、今なんか途切れた」


「私もです」


「にゃー」


 なんというか、自宅からある程度距離が離れたところで、何か繋がっていたものが途切れたような感覚がした。

 それまでダンジョンの外でも使えていた『治癒』の魔法も、その何かが途切れた後は使えるイメージが湧いてはこなかったのだ。

 見ると、美剣もネコの姿に戻っている。


「美剣、今から人の姿に変身できそうか?」


「にゃー、無理なのにゃ。」


「ここは……自宅から約500mといったところでしょうか」


 予想は当たった。


 オレ達の能力の変化は、やはり『軽トラの再異質化』による影響であり、その効果範囲は軽トラの周囲約500mということだろう。


「あれ? でも、ダンジョンの中って実際にそこにある空間じゃないんですよね? なんか別の位相の場所にあるらしいとか。それだと、ダンジョンから出た時点で能力が解除されるはずなんですけどね?」


「たしかにオレもそう思うんだが、ダンジョンの不思議は今に始まったことじゃない。そもそも、ダンジョン内までスマホの電波が通じることも説明がつかないんだ。そんなものだと割り切るしかないんだろうな」



「にゃー、今日こそ人の姿でレストランに入れると思ったのにニャ……」


「今度は軽トラで来ような」


 さすがに500mも範囲があれば、駐車場から店内までの距離くらいは余裕だろう。


「はいにゃ! わたしは焼きたて熱々のマンガ肉を所望するにゃ!」



 ということで、次のお出かけの目的地は美剣の希望によって決定されたのであった。


「お前猫舌じゃないのか?」


「にゃー」

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