第134話 ダンジョンの成長

 軽トラの【再異質化】の検証を終えたオレ達は、今度はダンジョン自体の確認をすることにした。


 昨日の、このダンジョンだけに発生した地震。


 このダンジョンの『成長可能性』は、『D』と他のそれと比べて高い評価だった。


 ということは、ダンジョンが『成長』し、その成長に巻き込まれた軽トラが【再異質化】したという事だろうと推測できる。




 とりあえず、軽トラフロントガラスのHUDヘッドアップディスプレイのカーナビマップを確認。ハンドルのコントローラーで画面を移動したり、拡大させたりして詳細を確認していく。


 マップ上は、2階層までの表示。ここまでは変わりない。だが、このカーナビは新しいフロアに入った時に、そのフロアのマップを自動ダウンロードするような仕様になっているため、3階層の有無は実際に行ってみないとわからないし、2階層から3階層に通じる階段の有無も、2階層に行ってみないと判明しないのだ。


 それでも、もしかしたら自動アップデートがなされていない可能性もあるため、オレ達は「無敵移動砲台」と化した軽トラを駆り、まずは1階層を実際に検証して回る。


「にゃー、結局、魔物を倒すのはよくても、魔石を拾いに降りなきゃいけないのニャ」


「軽トラさん、自動で魔石を集めてくれたりしませんかね?」


 なにやら、美剣みけとマナミサンが現代文明の利器に慣れ切った贅沢な現代人のようなことをおっしゃっておられる。

 

 まったく、人間というものは便利になればなるほど怠惰になっていくものなのだろうか?

 なんて、運転席から動かないお前が言うなって? はいはい。


 結局、1階層も2階層も以前の探索時と構造に変わりはなく、残すは例の、鍵のかかっていた玄室を残すのみとなっていた。


 マップには、玄室内に階段のマークが出現していた。



「階段が出現しているのは確定だろうな。」


「はい、私もそう思いますね」


「にゃー、おなか減ったのニャ」


 美剣よ、『収納』に缶詰いっぱい入っているからな。サ〇ウのご飯もあるぞ! 電子レンジはさすがにないが。


「開けるぞー」


「「はい(にゃ)」」



 鍵のかかっていた扉の向こう、その玄室の床には――


「やっぱりあったな」


「予想通りです」


「おなか減ったのにゃ」


 地下3階層へと通じる階段が新たに現れていたのであった。


「どうします? この先を確認しますか?」


「いや、楽しみは後に取っておこう。砲台の弾割り箸とかも足りなくなってきたし、美剣も腹減ったようだしな。」


「美剣ははんばーぐの気分なのにゃ」


「最近思ったんだが……猫なのに魚より肉の方が好きなんだよな」


「気のせいにゃよ」


「はいはい、オーク肉をミンサーで挽きますからね。牛肉残っていたかしら?」


 オレ達は、この日は一旦探索を取りやめ、体勢を新たに整えた割り箸の補充とかのちに再開することとした。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

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