第131話 美剣の再異質化

「『魔法剣エンチャント』!」


 マナミサンの持つ刀から、一瞬にして焔が立ち上る!


「どうやら、剣に魔法のチカラを付与することが出来るようになったみたいです!」


 これはすごい!


 まるでアニメの中の魔法剣士じゃないか!


「あと、こんなこともできます!」


 マナミサンは、刀身の焔をいったん収めると、今度は氷の雫を刀身に纏わせる!


「火魔法だけじゃなくて、氷属性も使えるようになりました!」


 なんと!


 火属性のエンチャントだけでも物凄いのに、相反する氷の属性までをも使いこなすなんて!


 





 なんだろう……。回復魔法を覚えて喜んでいたオレが小さく見えてきた……。



「……で、美剣はどんなことが出来るようになったんだ?」


「んー、よくわからないんにゃけど、自由にネコにも人にもなれるようになったみたいニャ」


 そう言うと、美剣は瞬く間にネコの姿に戻り、そしてまた人の姿に戻る。


 ちなみに、ネコの姿になった時に衣服はすべて脱げているので、今は全裸だ。


「つまり、一瞬で裸になることが出来るニャ」


「いや、確かにそうだけども。」



 美剣のおふざけのせいと、これまでもネコになったり人型になったりしていたからよく理解できなかったが、よく考えてみれば、これは自由に変身できるという能力なのではないか?


 人語をしゃべり、自由に人の姿に変身する猫。


 確かそんな存在がどっかの神話かなにかにいたような……


「キャットシーなのにゃ」


「ケット・シーな。」


「! 大変です! 美剣ちゃん! それ以上変身してはいけません!」


「どうしたんだ?」


「たしか、ケット・シーは8回までしか人の姿になれないはずです! 9回変身すると、もうネコの姿のままでしかいれなくなってしまうらしいのです!」


「にゃー、だいじょうぶみたいにゃよ?」


「……そうなのですか? じゃあ、ケット・シーとは違うのかしら?」


「だからキャットシーにゃ」


「それも違うと思うぞ」



 どうやら美剣はスコットランド方面の伝承に出てくるケット・シーのように自由に人の姿に変身できるが、伝承とは違って回数に縛りはないらしい。


「たしか、ケット・シーって本当は魔女なんじゃないかって説もあったな。」


「にゃー! 美剣は魔性の魔女なのニャー!」


「魔法は覚えたか?」


「火は怖いし氷は寒いし無理なのニャ」


「くっ、やはり魔女ではなくネコか……」


「他には何かありますか?」


「そういえば、にゃんか、あの臭い奴らアンデッドを自由に操れるようになったみたいニャ。それに、消滅させることもできると思うのニャ。


「『死霊操作術ネクロマンシー』? と『解呪ディスペル』?」


 そうか、たしか伝承ではケット・シーは「死者の魂を盗む」と信じられていたようだからな。

「盗む」と「操る」ではいささかニュアンスは違えど、アンデッドに有用なのは確かなようだ。


 それにしても。



「『解呪ディスペル』は『君主ロード』になったオレに生えてきてほしかった……」

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