第130話 異質化再び

 ダンジョン入り口の玄室で、オレ達は地震に遭った。


「結構デカい地震だったな。とりあえず、家の方が心配だ。様子を見に行こう」


 ひとまずオレ達はダンジョン出口の階段を上り、家の中に急いだ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「……なんとも……なってないな」


「おうちは揺れなかったんでしょうかね?」


 玄関の中に入ると、玄関に飾られていた招き猫などの置物も、部屋の中の本棚の中も、食器棚の皿も何もかもが普段通りに並んでいる。


「にゃー、ダンジョンの中だけ揺れたのかニャー?」



 美剣みけも首をかしげる。


 あれ?


 なんだろう、この違和感は。



 今、美剣が首を傾げた。

 それと同時にネコミミも横に傾く。

 ネコのクセに人間みたいな仕草がうまいなって、さっき思った。

 ネコのクセに……いや、ネコっていうか……!



「美剣! お前、人型のままだぞ!!」


「にゃっ!!!」


「あっ! 言われてみれば!」


 オレも驚いたが、美剣も、マナミサンも驚いている。


 確かに美剣は軽トラの側にいればダンジョンの外でも人の姿になっていた。

 

 だが、今軽トラはダンジョンの中にあるのだ!


 


 そんな馬鹿な、と。


 なにが起きているんだと考えた―――


 その時、強烈な頭痛と眩暈がオレを襲った!


「くっ! なんだいきなり!」



 オレはたまらず頭を抱えてその場にしゃがみ込む。


 見ると、マナミサンも、人型のままの美剣も同様に頭を押さえている。



「これは……同じニャ」



「なに!?」



「ご主人! あの時と同じニャ! わたしがネコから人の姿になった時! あの時も、けいとらの中にいたときに突然揺れて、気が付いて少ししたら頭が痛くなって、人の姿になってたのニャ!」



 ということは……



 さらなる異質化!?



 そういえば、あの時美剣は言っていた。


『なんか、この姿人型になったらいろいろわかるようになってたにゃ』


 と。



 で、あるならば。


 わかる、分かる、解る。


 たった今、自分の身体に起きた変化がわかる!



「美剣、まだ頭は痛いか?」


「にゃー、まだ少し痛いのニャ」


「よし、そのままじっとしてろ」


「にゃ?」


「『治癒ヒール』!」


「「おおおおおおおおおおお!」」



 オレに、治癒魔法が生えてきた!




「先輩? 私もわかりました。私たち、【異質化】したんですね?」


「ああ、そうなんだろう。真奈美はなんか変化はあるか?」


「そうですね、こんなことが出来るようになりました」


 マナミサンは左手に持っていた刀を鞘から抜くと、右手だけで柄を持ったままこう叫んだ。


「『魔法剣エンチャント』!」


 マナミサンの持つ刀の刀身から、一瞬にして焔が立ち上ったのだ!


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