第129話 地震
我が家の車庫にできたダンジョンの2階層、その最深部。
おそらくはこのフロアで最後となるであろうエリアへと続く扉の鍵を、今開ける。
「開けるぞ」
「「はい(にゃ)」」
カチリ
オレは鍵を開け扉を開ける。
「……やっぱり、行き止まりか」
扉の先には、その扉以外出口のない、行き止まりの玄室。
そこには魔物もポップせず、やたらと静かな空間が広がっていた。
「なんにせよ、これで我が家のダンジョンは踏破したということだな」
「にゃー、なんかさみしいのニャ」
「そうですね。さみしいというか、物足りないというか……」
オレも全く同感だ。
これまでのダンジョン探索は、危険もあったが総じて楽しかった。
この扉の奥には何があるんだろう。
まだ見たことのない魔物はどんな戦い方をして、どんなお宝を落とすのだろうと。
期待と興奮が不安や恐怖を上回る冒険。
美剣とマナミサン。この二人がいたからこそ。
一人では決して味わえない感動や共感。
例えるなら、お気に入りの映画が終わってしまったような寂寥感。
念のためにカーナビのマップも確認する。
未探索の場所も、隠し扉がありそうなエリアも見当たらない。
「今日のところは帰るか」
「はい、踏破のお祝いしましょうね」
「にゃー、オーク肉は飽きたのニャ」
オレ達は、さみしい気持ちを抱えながらもダンジョンの来た道を軽トラに乗って戻っていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
最初の玄室に戻り、軽トラから降りる。
「あ、そういえば、さっきのレベルアップで火魔法が強化されたみたいです」
マナミサンの話によると、どうやらこれまでは敵単体に対して1発という単位でしか撃てなかった魔法が、広範囲の敵複数に対して使えるようになったイメージが湧いてきたとの事。
「そういえば、オレもなんだか新たなイメージがあるような……」
まだ実感としてはイマイチだが、何となく盾に関する技というか、コツのようなものがつかめた感覚がある。
「にゃー、美剣はなにも新技ないニャよ。」
「美剣は、十分強力なスキルをもう持ってるじゃないか」
「それでもなんかさみしいニャ」
「新しい技は、今度周回するときにでも試してみようか」
「はい!」
そうだ。今までは「探索」だったのだが、次からは「周回」になるのだ。
単に言葉が変わっただけとはいえ、改めてさみしさを感じる。
そんなとき、
「地震にゃ!」
突然の揺れ。
ダンジョン内でまさかの地震に遭遇した。
結構強い揺れ。震度にして4から5くらい。1分も揺れただろうか。
いや、実際にはもっと短い時間だったのかもしれない。
その地震が収まった後、
『このダンジョンの成長可能性は割と高くDランクです』
オレはなぜか、ダンジョン調査員の、あの日のその言葉を思い出していた。
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