第128話 扉の先は

 2階層のボスを倒したのち、周辺の探索を続ける。


 ボス部屋の隣の玄室には、敵はなく中央に一つの宝箱。


「にゃー、今度こそ負けないニャー!」


 美剣みけがさっそく宝箱に飛び掛かる。



 1階層では、同じようなシチュエーションの宝箱の開錠で美剣が罠を作動させてしまい、テレポーターで当時未だ未知だった2階層に飛ばされたという経緯がある。



「待て美剣。念には念を入れよう」


 もしも罠を作動させてしまっても被害が最小で済むように、オレは軽トラを宝箱ぎりぎりまで近寄せる。

 大体の罠は軽トラに飛び乗る事で深刻な被害を逃れられるはずだ。








「にゃー、やっぱり手ごわいニャね。またどっかに飛ばされる罠ニャよ」


 またテレポーターか。


 もし、ここで飛ばされたらどうなるだろうか。


 以前は、1階層下の2階層に飛ばされた。


 ここは2階層。この下にフロアはないと思われる。


 という事は、『石の中』もしくは『土の中』に飛ばされてしまう可能性もあるかもしれない。


 


「ん~、手ごわいニャ。またひっかかりそうなのニャ」


 美剣が弱気だ。


 無理もない。この前1回失敗しているからな。

 

 いくら天真爛漫な猫とはいえ、美剣は人並み、いや、分野によっては人以上の知能があるのだ。


 失敗を糧に成長したり、同じ轍を踏まないといった学習能力は備えている。


 それに、今のオレ達はプチトマトでドーピングしている。

 美剣の、宝箱の罠解除に対する感覚もふだんより鋭敏になってるはずだ。

 それなのに、あそこまでの戸惑い様なのだ。

 


「よし! あきらめよう!」


「にゃ?! ご主人、いいのかにゃ?」


「ああ、宝箱は逃げない! 中にどんなお宝が入っているかは知らないが、オレ達の命より大切な宝などない! ここは勇気ある撤退をしよう!」


「にゃー、ご主人! 美剣は感動したのニャー!」


「はい! 先輩! かっこいいです!」


 なんか褒められてしまった。

 なんか最近前からいいところがなかったような気がしてたので、久々に承認要求が満たされる感覚があるな。


 まあ、今回もオレが何か活躍したわけではないのだが……


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ということで、宝箱は後回しにして、さっき大オークが落としたカギの鍵穴がある扉を探し、こちらもすぐに見つかった。


「先輩、軽トラのマップによると、このフロアの未踏破エリアはこの扉の先だけです。」


 そうか。


 はたして、このダンジョンはは本当にこのフロアで終わりなのか。


 もし、3階層も存在するのならば、この先もさらなる探索が続けられる。

 

 命の危険はあれど、心躍らせる冒険ははたして終わってしまうのだろうか。





 

 この扉を開ければ、すべてははっきりする。

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