第124話 プチトマト
「さーて、まずは我が家のダンジョンをコンプリートしなくちゃな」
陽介君たちを無事救出し、1日の休みを挟んだオレ達は、再び車庫ダンジョンの最初の玄室に来ていた。
熊岱市のダンジョンを買わないかという話には、正直興味が無いわけではない。
だが、仮に買うとしても、まずは自分のおひざ元のダンジョンをクリアもせずにあちこち手を伸ばすのはどうかと思うのだ。
それに、我が家のダンジョンは地下2階層までしかないらしい。
以前、テレポーターで飛ばされた時に、すでに2階層の半分近くを
まずはここをクリアしてからその後の事を考えよう。
「そうですね。あのダンジョンを買うにしても、軍資金が足りませんしね」
「にゃー、とっととここをやっつけて、あちこち出かけておいしいものを食べるのにゃー!」
おお、美剣がいつのまにか食いしん坊キャラになっているぞ。
そういえば、熊岱市の帰りに寄った地元名物の老舗菓子屋のあんこ餅を気に入っていたな。ダンジョンまんじゅうといい、美剣はあんこが好きなのかもしれん。
あ、そうだ。
食べ物で思い出した。
この前、この玄室の片隅にプランターでプチトマトを植えていたのだ。
たしか、ダンジョン内で酸素が足りなくなったらどうしようとか思い、光合成ですこしでも酸素の足しになればとか思って植えたんだったか。
だが、テレポーターで飛ばされたり、姉たちが来たり、陽介君たちの救出に行ったりなどしてすっかり忘れていて、植えてから肥料どころか水も上げていない。
そもそも、オレに植物を育てるという技能は最初からついていないのだ。だったらなぜ植えたというツッコミは黙殺しよう。
で、すっかり枯れているだろうと思って玄室の隅にあるプランターの方を見ると、
「たわわだな」
「たくさん実ってますね」
「にゃー、パンとはんばーぐとちーずがあればいいのににゃ」
そこには、たくさんの実をつけた、真っ赤なみずみずしいプチトマトが元気に成長していたのだった。
「どうやら適応したみたいですね。ダンジョン内で地上の植物を植えても、ほとんどはダメになっちゃうみたいですけど」
「そうなのか?」
「はい、ネットで調べました。」
どうやら、ダンジョン内で植物を育てようとした人はほかにもいたらしい。
ダンジョン内では、自生している植物が不治の病を治す薬になったりしている。
そんな不思議効果を狙って植えたのかどうかまでは知らないが、どうやらその場合の成功率はとても低いようである。
「そうか、なら、運がよかったんだな。美剣のおかげかもな」
「にゃー、チュー〇味かにゃあ?」
いやいや、さすがにそこまで都合よくはないだろう。
「で、食べても問題ないのかな?」
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