第123話 異世界とは

 個人でダンジョンを買うために必要なポイント数には、そのダンジョンの階層数やら脅威度やらが関わってくるらしい。


 今回オークションに出される熊岱市のダンジョンの場合、全5階層と言われているので、5+4+3+2+1で最低でも15ポイント必要。

 

 それに【脅威度】の値が乗算され、例えば脅威度最低のGランクなら×1、Fランクなら×2となる。熊岱市のダンジョンは脅威度が『E』だったので、15×3で45ポイントあれば購入資格があるという事になるらしい。

 

 オレもマナミサンも53ポイントだから、これに合致するわけだ。



「なんか色々複雑だったけど、内訳とかが分かってスッキリしたな」


「はい。それにしても、わたしたちもそれなりに勉強したつもりでしたが、知らないことって多いんですね」


「にゃー? 難しい話は終わったかにゃ?」


 美剣みけよ、お前はまだ寝てたのか。


「知らないことといえば、ちょっと違うが不思議なこともたくさんあるしな」




 そうなのだ。


 異質化した軽トラや美剣の存在を知った警察や自衛隊、それに支援センターの対応。


 感謝状とかその他の諸々。しかし、それ以外の干渉は皆無。


 警察庁長官やら、陸上総隊司令官といった組織のトップからの書状(まあ、書状に名前を付けただけなのかもしれないが)ならばなおさらなのだが、


 これらが、異様に早すぎる。


 まるで、こうした不可思議なことに対して何かの申し合わせでもあったかのように、どの組織も似たような対応を迅速に行ってきているのだ。




 それに、気になる文言。


 それは、『異世界』という言葉。



 あれは、陽介君たちの救出が終わった後に隊長ズから聞いた話。 


『国全体、いや、世界中に於いて、に関わりのあると思われる事案については、その当事者は極力自由意志が尊重されることになっている』


 そうだ、あのとき確かに隊長ズは『ダンジョン』という言葉と同列に『異世界』という言葉を使っていた。


 それに――思い出した。

 どこかでそのワードを聞いたと思っていたのだが、以前駐在さんが我が家に来た時に、個人的な質問として『異世界とのつながりみたいなものを感じたことはないか』と言っていたではないか。


 そのとき軽トラパトカーの助手席にいた女性交通指導隊員が、地球人離れした顔立ちだったのを思い出す。


 もしかして、あの娘は本当に異世界から来たのではなかろうか。


 そして、『ダンジョン』と『異世界』には何らかのつながりがあるのでは……


「にゃー、ご主人。顔が怖いし眉間にしわが寄ってるニャよ? 難しい事ばかり考えてないで、そろそろご飯にするニャよ。美剣は寝すぎてお腹がすいたニャ」


「はいはい」


「お手伝いしますね」


 今日の食事当番であるオレは迷宮に入り込みそうな思考を中断し、夕食を作るべく台所に行って野菜を刻みはじめるのだった。

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