第117話 救出事後

「「さて、無事救助もできたことだし、少し話を聞かせてもらおうか?」」


 隊長ズがにこやかな笑いを浮かべながらオレたちの方に近づいてくる。


 さすがに周囲に聞かれては困る話なので、人払いをした自衛隊のテントの中に誘導される。


そして――。




「「まあ、たいがいの事は刀のねえちゃんマナミサンから聞いたからほとんど聞くことはねえんだけどな!」」


 たしかに、軽トラの荷台の上でマナミサンが説明していたな。


「「異質化した軽トラのこと、その能力。そしてネコの嬢ちゃんのことは、上層部に報告はさせてもらう。」」



 まあ、そうなりますわね。その報告が上層部の目に触れてからが困難押収とか調査とかの始まりか。


「「だが、大事な話はここからだ」」



「?」


「「あんちゃんも、刀のねえちゃんも、そしてネコの嬢ちゃんも。っていう意向でいいんだよな?」



「あっハイ。もちろんその通りです」



「「よし分かった! ちゃんと報告書にはその旨を強調して書いておくからな!! なに、悪いようにはならねえだろうさ!」」



 なんですと?


 隊長ズ曰く、そもそも一応民主主義のこの国において、本人たちの同意なくその所有物(この場合、軽トラももちろんだが美剣もペットという事で動産に分類される)の押収及び身柄の拘束などはありえないと。

 それが出来うるのは犯罪の取り調べのためとか、裁判において懲役や禁固等に処せられた時、および精神科指定医の二人以上が診察によって治療が必要と認めた者くらいのものである。


 それに合わせて、どうやら国全体、いや、世界中に於いて、ダンジョンや異世界に関わりのあると思われる事案については、その当事者は極力自由意志が尊重されることになっているのだとか。


 ここでふと思い当たる。『異世界』と言うキーワードをどこかで聞いた気がするのだ。

 確かあれは―――



「おおーい! ちょっとまってくれいー!」


 話が終わってテントから出たオレ達を呼び止めるだみ声。


「きっ、きみたちいー! うちのダンジョンに潜らんかあ! きみたちなら、成果物税金8割差っ引いた後の6割、いや、7割の報酬を渡すぞおー! どうだあ! いいじょうけんだろう!」



 ここのダンジョンの持ち主、建築会社の社長さんが声をかけてきた。


「それか、その軽トラを買い取ろう! 一千万でどうだあ! こんな大金、きみたち見たことないだろう?」



 はあ……。


 相手にするのもバカらしいのでオレは返事もせずに踵を返す。


 その後ろでは機動隊の隊長さんが社長さんに「捜索に関わったすべての事柄には守秘義務が課せられます。破った場合には懲役5年以下、500万円以下の罰金……」とか言ってフォロー&口止めをしてくれているようだ。



 陽介君たちを救出するという目的は果たした。


 隊長さんたちとの話も終わった。



「「あんちゃんたち! ありがとうな!!」」


 隊長ズの見送りを受けながら。



「さあ、家に帰ろう」


「「はい(にゃ)!」」 



 オレ達は、家路についた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る