第116話 救助完遂。
美夏さんを軽トラの荷台に乗せた後、
「隊長さん! 今のうちに救急車を呼んでください! 早い方がいいでしょう!」
「「いや、確かにその通りだが、携帯も無線もここでは使えんぞ?」」
「この軽トラの中なら使えますから!」
オレの言葉に一瞬怪訝な顔をしたが、不思議現象は今更だと思い直したのか、機動隊の隊長がスマホで通話を始める。
ああ、これで美剣のことも、軽トラの能力も、すべてをさらけ出してしまった。
地上に戻ってからどんなことになるのか想像すらしたくない。
だが、そのおかげで陽介君たちを無事助けられた。
命。
何よりも尊重されるべきもの。
それを助けられたのだから、胸を張るべきだ。仮に、秘密を守ることを優先させていたら、美夏さんの命は救えなかったに違いない。
軽トラがあったから。
真っ暗なダークゾーンも難なく進めたし、今こうして美夏さんを運ぶこともできている。
美剣がいたから。
真っ暗闇な中でもコウモリを
つまり、
これは最善の選択であったのだ。
そう自分に言い聞かせながら、オレたちは無事に地上に戻ってきた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「本当にありがとうございました。このお礼は落ち着いたら必ずします!」
陽介君からお礼の言葉をもらう。彼らはこの後、到着した救急車に乗って現地の総合病院に運ばれていった。
救急隊員曰く、美夏さんは処置が適切だったのですぐに元通り歩けるようになるだろうとの事。
なにやら陽介君は後でお礼をするようなことを言っていたが、正直お礼の言葉と全員無事という結果だけで報われるのだが。
探索者用サイトで調べたところによると、ダンジョン内で遭難し捜索を受けた場合、警察や自衛隊など、公的な機関のみが参加した場合は救助費は税金からまかなわれ、負担金はかからない。
だが、民間の組織なり個人なりが参加した場合、負担金の相場というものがあるらしい。
日当として、一人当たり約5万円。山岳救助の
もちろん、オレは請求する気はないのだが、こういったものは面倒でも最低の水準額くらいはきちんともらっておかないと、助けられたほうも気持ちの区切りとか、申し訳なさとかの気持ちの整理がつかないそうなのでしっかりもらった方がいいらしい。
まあ、陽介君たちは知らない仲でもないのだから最低額で十分だ。
お金のことはまあいい。
問題はこの後だ。
「「さて、無事救助もできたことだし、少し話を聞かせてもらおうか?」」
隊長ズへの説明が待っている。
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