第115話 発見、治療

「「無事か!!」」


 玄室に入るなり、コウモリ共に襲いかかられている陽介君たちの姿を確認する。


 隊長ズが無事を尋ねる問いかけを放つとともに、オレは軽トラのクラクションを鳴り響かせる!


 ボタボタと地面に落ちるコウモリ共を踏みつぶしながら、隊長ズは陽介君たちのもとに駆けていく。

 美剣みけはレジストしたコウモリ共に割り箸を投擲し、マナミサンは割り箸を美剣に手渡して装填いる。


 オレは、軽トラである程度のコウモリを轢いてから、軽トラを陽介君たちの正面に付け、ヘッドライトでその姿を照らす。



 突然のクラクションの音と、軽トラのヘッドライトに照らされて驚いたような顔をする3人。

 そしてすぐに苦痛の表情に戻る美夏さん。右足のすねから下が変な方向に折れ曲がり、そこから出血しているのが見える。やはり解放骨折か。

 その顔は青白くはなっているが、まだ意識はあるようだ。

 

 救助が来たことをすぐに察した陽介君が叫んだ第一声は、


「妹が! 美夏が大変なんです! 助けてください!」


 隊長ズが駆け寄るのを尻目に、オレは荷台の『収納』からポーション類を取り出したところ、


「「待て! まだポーションは使うな!」」


 隊長ズの叫びに制止させられる。


 隊長ズの説明によると、骨が折れた状態で治療効果の高いポーションをいきなり使うと、その骨が折れたままくっついてしまい、それを完治させるには後からまた骨を折って削って整復するという大手術が必要になってしまうようなのだ。

 かといって、今このダンジョン内で折れた骨を正しい位置に戻そうにも、折れた骨が表皮を突き破っている状態で無理に骨を戻そうとすれば、多量の出血を招いたり、雑菌が入って敗血症の原因となってしまったりする可能性があるとのことだ。

 

 そこで隊長ズが取った方法とは、


「「ペットボトル500㎖の水にポーションを数滴垂らしてよく混ぜろ。混ぜたら傷口に振りかけるんだ!」」

 

 なんと、ポーションを薄めて効果を下げ、表皮のみの止血をまずは行うようだ。


「「毒消しポーションはあるか? それはそのまま全部飲ませてやれ!」」


 そして、毒消しのポーション。これは傷口から入ったかもしれない雑菌対策という事らしい。


「「なにか担架の代わりになるものを! にいちゃん! 軽トラのに毛布か何か入ってないか!」」



 ありゃ、すっかり軽トラの『収納』のことも把握されていらっしゃる。さすがプロの観察眼だ。

 そういえばさっき何も考えずに収納からポーション出しちゃったもんな。オレが原因か。


 そして、骨折部位にコボルドこん棒で作った添え木を縛り付けた美夏さんを無事に軽トラの荷台に乗せた後は、さっきの薄めたポーション水の残りを美夏さんに飲ませている。痛み止めになるようだ。


 オレはすっかり隊長ズの知識と手際に感心してしまっていたが、急いで地上に戻らなければならないことを思い出し、すぐさま運転席に舞い戻った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る