第114話 捜索⑩

 ダークゾーン内、回転床から続く通路を捜索する。


 先ほど入った玄室は、入口のみしかない袋小路の部屋だったので、次の通路へと向かう。


 回転床で回されたあと、自分の向いている方向を軽トラカーナビで確認し、まだ捜索していない通路に向かっていることを確認する。


「あ、落とし穴PITにゃよ」 


 通路の曲がり角を曲がった先に、軽トラのヘッドライトに照らされた膝の高さほどの落とし穴が見えた。


 その落とし穴には血痕があり、そこから血の雫が通路の先に続いている。


「やばい! 誰か落ちて怪我をしたみたいだ!」


 落とし穴に落ち、出血を伴う怪我をする。単にぶつけてできた裂傷とかであればまだいいが、もっと深刻な怪我かもしれない。


「「まずいな。解放骨折しているかもしれないぞ。」」


 隊長ズが心配する。なるほど、消防ではなくともいざという時のために機動隊も自衛隊も救急術を学んでいる。状況からその怪我の程度を予測したらしい。


 視界の利かない真っ暗闇でいきなり足もとの床が無くなるのだ。防御態勢も取れず、ひっかっかった足か、とっさに付いた手のどちらかを骨折している可能性が高い。まして、予想もしない方向からのチカラがかかるので、折れた骨が表皮を突き破る可能性も高い。


 とっさに降りた隊長ズが、軽トラのヘッドライトに照らされている、残されている血痕を確認する。


「「血はまだ凝固していない。ごく近い時間に怪我したと思われる。解放骨折は早い治療が必要だ! すぐ血の跡を追うぞ!」」


 あ、そのセリフ、オレが言いたかったのに……オレだって、探索者センターで学んだ知識があるんだぞ! まあ、プロと張り合っても仕方がないか。


 落とし穴から続く血痕は、すぐそばの玄室の扉に続いていた。


 隊長ズは、軽トラの荷台に戻ることもせず、すぐさま玄室に向かって走り出す。そのあとを美剣とマナミサンが荷台から飛び降りてすぐ後を追う。


 オレは軽トラを運転し、みんなが突入した直後の玄室に滑り込む!



 ―なにものかにであった!―


 中では、やはりと言うべきか、コウモリたちが部屋の中を飛び回りながら、部屋の隅の方向に向かって攻撃を加えている姿が軽トラのヘッドライトで映し出される。

 

 その部屋の片隅には、矢が尽きて弓を振り回して応戦している九嶋陽介君と、その彼女の堀北御園さんの姿。もう一人、陽介君の妹である九嶋美夏さんは、足を抱えて地面にうずくまっており、他の二人は美夏さんに襲い掛かるコウモリ達を追い払っているようだ。


「「無事か!!」」








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