第110話 捜索⑥

 隊長ズがボス部屋のトンボモドキを全て討ち尽くした後、


 隊長ズは薬莢を拾っていた。


「「これだって国民の税金だからな! 可能な時は回収は義務付けられてんだ!」」


 なるほど、確かに実戦のさなかでそんなことをしていたら撃ち殺されてしまうからな。『可能な時』という言葉に秘められた事の重大性に思いを馳せる。


「あ、扉の向こうに、下におりる階段があったニャよ」


 玄室の廊下への扉を開けた美剣みけが報告してくる。ふむふむ、やはり、美剣はダンジョンの中なら、軽トラから離れても人化は解消されない。人化は我が家のダンジョンだけの現象ではなかったという事がこれで証明されたな。


 

 戦闘の終わった玄室を見渡してみると、隊長ズが拾っている薬莢のほかにも、折れたり矢じりの取れたりしている矢が散見される。

 拾って見てみると、壊れてからあんまり時間は経過していないような感じはする。


 どうやら、陽介君たちがここを通過したことに間違いはないようだ。





 薬莢のほかにトンボモドキのドロップした魔石も拾い、地下3階への階段を降りる。今回は隊長ズが倒したのでレアドロップはなかった。


「「さて、前情報が確かなら、この階にいる可能性が高いが……」」


 だから隊長ズ、なぜ長文まで息がぴったりなんだ。所属する組織も違うはずなんだけどな。隊長という役職には何か通じ合うものがあるのだろうか?


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 3階にたどり着いたその時、



 ―まっくらだ!―


 そうか、ダークゾーンか。


 3階に足を踏み入れた瞬間からのダークゾーン。これなら、ここのフロア内で迷っている理由に納得だ。


「ライト!」


 オレは軽トラのライトを点ける。


 隊長ズがあきれた表情でオレを見ている!


「「なあ、軽トラがダンジョンで動くってのは、とっても便利なことは納得するんだが……だけど、あのあんちゃんがやるとなんか拍子抜けするんだよな……」」



「にゃー、ご主人、言われているニャよ」


「先輩? 『ライト』と言う必要はあったのですか?」



 オレの味方がいないだと!


 たしかに、食い気味に『ライト』って言っちゃったけど、その辺はスルーしてくれるのが優しさってもんじゃないのマナミサン!?



 はあ……。虚しさと切なさと心細さがないまぜになったような気持になってきたのだが、泣くわけにはいかない。


 こんどこそ、オレが役に立ってみせるのだ!


 思えば、会社員時代オレは仕事が出来る方だったはずだ。まあ、イージーミスはたまにやらかしていたが。


 そんなデキル男のオレが、ポンコツキャラに収まったままでは納得がいかん!


 ここは、陽介君たちを見事に救出して、オレの株を上げなければ!

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