第102話 現場到着

 オレたちは、陽介君たちの救出隊募集のページに載っていた、熊岱市の民間ダンジョンにむけて出発した。


 自宅ダンジョン内から階段をガタンゴトンさせて軽トラを地上に出し、問題なく動くことを確認。

 幌を付けた荷台の中にいた美剣みけが地上でも人間の姿であることも確認。ただ、さすがに体操服とブルマの姿で外出させるのはいかがなものかと思い、市販のスポーツブランドのジャージ上下を着せている。


 軽トラの荷台収納の中にはこれまでドロップさせたポーション類や市販の薬品類、毛布類のほかカップラーメンやミネラルウォーター等の飲食物も完備。今回は缶切りもガスコンロも割り箸も10徳ナイフもあるぞ! レトルトカレーもあるんだからね!


 季節は冬。こんなこともあろうかと、軽トラのタイヤをスタッドレスに交換しておいてよかった。ちなみに右前輪はウサギからのドロップ品でちょっとだけ新しい。


 熊岱市に向かう1時間の間、美剣は人型の姿で初めて見る町、といっても田舎道だが、その風景に幌の隙間に張り付きっぱなしであった。信号待ちで隣に止まった右折車なんかにはネコミミの一部が見えてしまっていたかもしれない。

 こんなに景色を楽しんでくれるんだったら助手席に乗せればよかったとも思うのだが、途中で荷台に戻るのも目立ってしまうであろうから断念した。

 まあ、これからは堂々と軽トラで外出することも増えるかもしれないからな。その時はネコミミはかくして存分に助手席を堪能させてやろう。


 




 現場のダンジョンに到着する。


 テレビやネット以外では初めて見る他のダンジョン。

 建築会社の社長所有のダンジョンらしく、その入り口は工事用車両や重機を入れておく車庫のような建物で覆われていた。


 その敷地内には、機動隊や自衛隊の車両、パトカーなどが物々しくも整然と停められている。


 ダンジョン入り口を覆う建物の隣に自衛隊のテントが張られており、『捜索隊協力受付所』という看板が掲げられていたので、近くに軽トラを停め、そこにマナミサンと二人で向かう。美剣は荷台の幌の中で息をひそめている。


 テントの中を覘くと、その受付に人は座っていない。わざわざ受付に隊員1人を配置するのがもったいないのだろう。


「捜索隊に参加しに来ました」


こういうと、自衛隊の現場隊長のような人が歩み寄ってきた。


「ああ、ありがたい。いまのところ、民間の協力者はあなたたちだけだ。探索者証を見せていただけますか?」


 大まかに状況をきいたところ、現在の状況は自衛隊の先着部隊と機動隊の第3小隊がすでにダンジョン入りし、最初の玄室に捜索拠点を定め、徐々に捜索範囲を広げているそうだ。

 

 民間ダンジョンという事もあってダンジョン内のマップは存在しない。

 

 無線も使えないダンジョン内なので、伝達は全て人間の伝令となるため、その捜索速度は推して図るべしだ。


 そして、肝心の陽介君たちだが、どうやら3階層に向かっていたらしい。

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