第99話 遭難者
「先輩?」
「なんだ」
「県内のダンジョンで遭難っぽいですよ?」
「どれどれ?」
マナミサンが見ているのは探索者専用サイト。
そのトップページに、赤と黄色で注意をひくアラートがポップしていた。
『探索者安否確認アプリ』
このアプリは、これから潜るダンジョンの名前と、探索開始と終了の時間の目安を探索開始前に登録しておき、帰還したら帰還報告を入れるシステムだ。
探索終了目安時間を大幅に過ぎてもそのパーティーが戻らずに帰還報告がない場合、探索者支援センターに通知が行き各所の警察や自衛隊に通報が行くという流れになっている。
なるほど、このパーティーは昨夕18時には戻る予定だったのが、翌朝の今(午前7時)になってもまだ戻ってないと。
帰還予定時間を8時間過ぎたところで通知が行くという事だから、午前2時にアラートがなったという事か。
夜中の出来事なので、捜索隊がもう組織されているのかは疑問だが、仮に捜索が開始されていたとしても、この時間になってもまだ見つけられていないという事だな。
「あ、付近の探索者にも捜索隊への参加要請が出ていますね。」
基本、遭難者の探索は国民の生命身体財産を守るための組織である警察や自衛隊が受け持つ。
だが、いかに警察とはいえ県に小隊が3つしかいない田舎の県の機動隊では県内全域をカバーするにはその人員に限りがあるし、所轄署の警察署員を組織しようにも、
通常業務も抱える中でなかなか人数などは集まらない。そもそも、警察組織では機動隊といえどもその戦闘能力は低いのだ。
かたや自衛隊はと言えば、各駐屯地に即応部隊はいるとはいえ、警察同様、重要拠点でもない限りはその人員配置数は推して図るべしである。
つまりは人数不足。
民間の探索者に協力を求めるのは至極当然のことであり、また、探索者も登録時に人命救助や災害派遣に協力するという協定書を交わしている。
民間探索者の捜索への協力は、当然強制力のあるものではないが、その協力に対する報奨金にはそれなりの額が設定されているし、何より、「探索者ランキング」という、国も認める公共への貢献度を可視化する序列制度内でのを上げるためのポイントもそれなりに付与されるのである。
「で、どこのダンジョンだ?」
「えーと、熊岱市ですね。近いです。」
熊岱市は、ここ丸舘市から車で1時間ほどの距離だ。
「で、消息不明のパーティーの詳細とかも出てるのか」
「あ、出てますね。えっ! この人たちって……!」
驚いたマナミサンの横からPCの画面を見ると、そこには
『
という、探索者講習の時に知り合ったイケメン君の3人パーティーの名前があったのであった。
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