第93話 刀選び
「ずいぶんと、レアドロップ率が高いのね?」
買取所のおばちゃんが怪訝な顔を向けてくる。
「あっはい、うんがいいみたいなんですよー、ははははははは」
やばい、やっぱりあの量を馬鹿正直に売るべきではなかったか。
通常のレアドロップ率は、レア度が低いものでも押しなべて1割ほど。魔石10~15個に対して1個くらいの割合で売却されるのが普通なのだろう。
なのに、うちの場合は招き猫の
単純計算でも、3人パーティーだから、美剣が倒す分、つまり全体の3分の1くらいの割合でレアドロップが出ていることになる。
で、こんな規格外のしゃべれる人型になる猫の存在を他人に知られるわけにはいかない。
なんとかごまかす方向はないものかと頭を巡らせていると、
「そこの彼女と二人で潜ってるんでしょ? スライムのアレ、使ったあとはレアドロップ出やすいって言うからねえ? おふたりさん、とってもがんばってるのねえ?」
なんかニヨニヨした顔でおばちゃんが語り始めた。
え? スライムのアレってそんな効果あるの?
後で調べたところ、体感として出やすいと感じる人が多いだけで、統計を取ったころその出現率は通常のそれと比べて誤差の範囲内であり、都市伝説の一種であるらしい。
それにしても、その統計をどうやって取ったのかが気になるのだが。まあいいや。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
買取所のおばちゃんを適当にかわし、隣にある装備品の販売所に来ている。
今日の目的の一つである、マナミサンの日本刀を買うためだ。
最初は品ぞろえの多い、探索者専用サイトの通信販売コーナーから買おうかとも思ったのだが、やはり剣の道に生きてきたマナミサン曰く、「実物を手に取らなければ良し悪しはわかりません」というお言葉により、直接商品を見に来たわけである。
とはいってもここは都会とはいいがたい県、品ぞろえは多くはない。
それでも、5振りほどある在庫の刀をマナミサンは一本一本手に取らせてもらい、そのうち2本の素振りを希望して訓練所への持ち込み許可をもらう。
さすがに店の中で真剣の素振りはできないそうだ。
ちなみに日本刀の値段はピンキリで、サイト内では一番安くて50万程度、一般的なもので80~150万ほど。最も高価なものは15億の値がついている妖刀ムラサメ。ただし、いつも『品切れ』になっているので実在するのかは疑わしく掲示板ではいつも物議を醸している。
マナミサンは2本の日本刀、オレは美剣の入ったネコカゴを持って、訓練場へと移動する。
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