第91話 姉の勘
「ところで、あの軽トラに鍵がささったままなのは、その秘密とやらになんか関係があるのかねえ?」
しまった! 鍵は抜いておくべきだった。
「あんたは昔っからどっか抜けてたもんね~。
くっ……! 若かりし頃の苦い思い出が! というか、あれは無断でオレの部屋に入る姉が悪いと思うのだが……。
これ以上隠し立てしても無理なことを悟ったオレは、軽トラがダンジョン内でも動くという重大な秘密を打ち明けたのだが、
「なんだ、そんなことか。」
にべもない反応だった。
「で、ネコちゃんの方は?」
もう嫌だこの人。
「ずっと一人で暮らしてきた佳樹が、いくら嫁さんをもらうからと言って突然動物を飼うのは不自然すぎるもの。飼い始めた時期もダンジョン出来た時期と重なるし。大丈夫よ、あの子たちも、守らなきゃいけないことはしっかり守れる子供たちだから。あと、私も、旦那もね。一人で抱えないで、せめて私たちには打ち明けて楽になりなさいな」
ということで、家に戻ってからは大暴露大会となり、しゃべれる猫に目を丸くした梢と蒼、存分にモフりはじめる姉。
カオスとなりながらも、夕食は車庫の中で冬のバーベキューを楽しみ、翌日にはダンジョン内で人型化した
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「じゃあな。梢、軽トラと美剣の写真は絶対友達とかに見せちゃだめだぞ?」
「わかってるって。よしおじちゃんも、美剣ちゃんのことバレないように気をつけてね! 美剣ちゃんがどっかに連れていかれちゃったりしたら嫌なんだからね!」
美剣と梢たちはすっかり仲良くなっていた。
「あ、あとSNSとかに乗せるのも絶対ダメだからな!」
「わかってるって、梢は『りてらしい』のかたまりなんだから!」
本当に大丈夫なんだろうか。
「ところでよしおじちゃん?」
「?」
「ダンジョンの中で、真奈美お姉ちゃんとか、美剣ちゃんと結んだんでしょ、絆(ひそひそ)」
「お、おまっ、なにを……」
「大丈夫、梢はちゃんとわかっているからね。今度は、私一人で電車で来るから、その時は梢ともね!(ひそひそ)」
「……こら、何を言っているんだ。」
「お嫁さんの約束、まだあきらめてないんだからね(ひそひそ)」
「梢! そろそろ帰るわよ! 車に乗って!」
「はーい! じゃあね、よしおじちゃん、真奈美お姉ちゃん、美剣ちゃん、またね~!」
こうして、姉とその子供たちは結局
「はあ、疲れた……」
「お義姉さん、いい人でしたね! 仲良くなれてよかったです!」
「はあ~、さみしいのにゃ。また一緒にヤキニクしたいのにゃ」
「春休みにでもまた来るだろ。」
「「ところで先輩?(ご主人)、梢ちゃんと何話してたんですか(にゃ)?」」
「疲れたからオレは寝る! じゃあな!」
「にゃー、ご主人は絶対隠し事なんてできない人なのニャ」
「ふふっ、まあ、そこがかわいいんですけどね」
この後、一週間ご無沙汰だったマナミサンに突撃され、美剣にもダンジョンに引っ張られと、結局ろくに眠れなかったのだった……。
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