第89話 悲鳴

 —なにものかにであった!―


 姪の梢がなにやら流行りの写真撮影だとかで大声を出してオレたちを驚かそうとして、その大声に反応して魔物がポップしてしまった!


「ちっ、真奈美はみんなを守って! 『挑発プロヴォケーション』!」


 ポップしたのは幸いにも灰色狼一匹のみ。オレたちにとってみれば格下だが、間違っても姉や子供たちに攻撃を通すわけにはいかない。もしそうなれば、即死してもおかしくはない。

 オレが『挑発』で敵を引きつけ、スキルを乗せない盾攻撃で狼にとどめをさそうとしたところ、


「キャーーーーーー!!!!」


 魔物の出現に驚いた梢が悲鳴を上げてしまった!


 オレが狼にとどめを刺したとほぼ同時に、新たな狼がポップする。


「あ”ーーーーーーーーっ!!!!!!」


 今度は蒼が叫び、またもやポップ。


「ゴラァ! あっちに行きなさい!!」


 子供たちをかばい、魔物を追い払おうとする姉の大声でまたもやポップ。


 この繰り返しが3ターンほど続き、計9匹の灰色狼を倒したところでようやく梢たちが落ち着きを取り戻す。


「はあ、大声出すと魔物が出るってことをすっかり忘れてたな。本当はあらかじめ注意しておかなきゃいけなかったのに」


「わたしも忘れてました。ごめんなさい。」


「よしおじちゃん、大きな声だしてゴメンね……? 何? 身体がムズムズする」


「おじちゃん、なんか変!」


「佳樹? これは何?」


  

 あー、これは……



 どうやら、戦闘に立ち会った姉や子供たちは、一つのパーティー扱いになって経験値が入りレベルアップしたらしい。


 あーあ、姉はともかく、10歳の女児と8歳の男児がレベルアップしてしまうなんて……。世界じゃどうかは知らんが、日本でレベルアップした子供ってこいつらくらいじゃないのかな?

 探索者資格保有者と、保護者の立ち合いがあれば未成年の子供でもダンジョンに立ち入ること自体は違法ではないが、わざわざ我が子に危険な思いをさせようと思う親でもないかぎり、ルールを破ってまで魔物との戦闘は行わないはずだ。


「えーと……それがレベルアップってやつだよ。梢、蒼。そして姉さんも。このことは、お友達にもママ友にも、絶対に言わないようにな! 義兄さんに言うのは仕方がないけど、ちゃんと口止めしておくように!」


「えー、お友達に自慢したいのにー」


「もしバレたら、お巡りさんがきて捕まるし、自衛隊の兵隊さんも来て連れていかれちゃうぞ(ウソ)」


「えーやだー。絶対に言わない!」


 よしよし、まだおどかしのきく年齢でよかったぜ。



 そんな会話をしていた時、蒼が、


「おじちゃん? 手から血が出てるよ? なんか、ぼく治せそうな気がするんだけど、治しちゃってもいい?」


 なん……だと……!

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