第86話 姪と甥

「—―ということで、家族会議を行う。」


「どうしたのにゃ?」


「議題は、冬休みで帰省してくる姉夫婦と姪と甥についてだ。」


「あら、どうしましょ。お義姉さまに気に入ってもらわないと」


 ふむ、マナミサンにとっての最重要課題はそれか。まあ、分かる気はする。

 だが、オレにとってはもっと大事なことがあるのだ!


「まあそれは何とかなるだろう。問題は、しゃべる猫みけと軽トラの件だ」


「にゃっ?!」


美剣みけは、姉たちが来ている間、ネコに徹する事。一言もしゃべらないようにな」


「不安だにゃー」


「で、軽トラの件だ。は、必ずダンジョンの中を見せろと言い張るだろう。姉も怪しい。」


「どうするんです?」


「そうなったら、オレと真奈美で護衛して、最初の玄室だけ見せよう。それ以外は危険極まりないからな。その際、軽トラは『動かないもの』としてそこに放置しておく」


「ってことは、その間はダンジョンはお休みなのニャね?」


「ああ、そうなるな」


「じゃあ、お情けもお預けなのニャ。むう」


「それは切実ですね!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「よしおじちゃ~ん! 梢が来たよ~!」


「おじちゃん、久しぶり!」


 そう言いながら梢と蒼が突進&ハグをかましてきたので、体さばきを……せずに受け止めた。


「佳樹、久しぶりね? 元気そうでよかったわ」


 姉の薫子が話しかけてくる。


「ああ、久しぶり。そっちもな。」


「ははははは、はじめまして! わたくし! 佳樹さんとおつきあいさしぇていただいている、は、早坂真奈美と申します! ふちゅちゅかものですが、よろしくお願いいたします!!」


「姉の高崎薫子です。うちのズボラな弟なんかの面倒見てくれてありがとうね~」


「いえ! そんなことは! あ、まずは休んでください! 遠路おつかれでしょう!」


 結局、姉の旦那さんは仕事の都合がつかずに来れなかった。オレはひとまず、数日遅れのお年玉を姪と甥に手渡し、姉に話しかける。


「何日くらいこっちにいられるんだ?」


「特に予定もないし、佳樹たちの迷惑にならなければ学校が冬休みの間の1週間はいられるけど。まあ、あの子たちが飽きるかもだし、2~3日ってところかな」


「あの! 迷惑なんかじゃないんで! ぎりぎりまでいてください!」


「ありがとう」


「あー! ネコちゃんだ! かわいいー!」


「に……にゃーにゃーにゃー(棒)」


 さっそく美剣が捕まったか。相変わらず鳴きまねが下手だが、まあ、今のところは無事なようだな。


 マナミサンが入れてくれたお茶を飲んでまったりしていると、予想通りの事態が訪れる。


「「(よし)おじちゃん! だんじょんいきたいー!」」



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